2024-02-09
お釈迦様によりインドで誕生した仏教は、中国や朝鮮を経て日本にも伝えられてきました。その際に、さまざまな場所で色々な解釈が生まれ、多数の宗派に分かれていったといわれています。宗派により教えは異なりますが、ご葬儀の方法やしきたりにもそれぞれに違いがあるのは広く認知されていることでしょう。
そのような中でも、曹洞宗のご葬儀には、他の宗派にはない特徴があります。そこで本記事では、曹洞宗のご葬儀の考え方や意義、ご葬儀の流れやマナーなどを詳しく解説していきます。
曹洞宗におけるご葬儀の一番の目的は、故人様をお釈迦様の弟子として浄土へ導くものです。よって曹洞宗のご葬儀では、まず故人様をお釈迦様の弟子にするための儀式が行われ、最後には故人様を仏の世界へ導くための儀式が行われます。
曹洞宗の開祖は中国唐代の禅僧、洞山良价(とうざんりょうかい)です。なお、800年ほど前の鎌倉時代に日本へ正伝の仏法を伝えたのは道元禅師(どうげんぜんじ)で、その後日本全国へ広めたのは瑩山禅師(けいざんぜんじ)だといわれています。
曹洞宗の教えとして、重要視されているのが坐禅です。これは、お釈迦様が坐禅によって開眼されたことに由来しています。つまり、曹洞宗では修行と悟りを一体のものとする「修証一如(しゅしょういちにょ)」の教えに基づき、修行で坐禅(只管打坐)を中心に行う形の修行が行われているのです。
ここでは、曹洞宗におけるご葬儀の大きな特徴を解説していきます。
曹洞宗のご葬儀では、故人様をお釈迦様の元へ弟子として送り届けることを重要視しています。そのため、ご葬儀は大きく2つの構成に分けられて進められます。
一つ目は、授戒(じゅかい)の儀式です。授戒とは、その言葉の意味通り「戒めを授ける」という意味になります。つまり、故人様が仏門に入って仏弟子となるための戒律(戒名や戒法)を授かるのです。
二つ目は、引導(いんどう)の儀式です。仏弟子となった故人様が、迷うことなく仏の世界へ旅立てるよう、導師(僧侶)が偈頌(げじゅ)や法語を唱えて極楽浄土へ導きます。
曹洞宗のご葬儀で特徴的なのは、鼓鈸三通という儀式です。鼓鈸三通は、3人の僧侶がシンバルのような鐃祓(にょうはち)や、手で持てる鳴り物の引磐(いんきん)と鼓を用いて「チン・ドン・ジャラン」と派手な音を立てます。
この音色は、参列者の悲しい心を大きく包み込み癒してくれるとも考えられています。この儀式で故人様の魂を出迎え、そして見送るのです。
曹洞宗のご葬儀は、他の宗派と比べると儀式が多く取り入れられているのが大きな特徴です。ここでは、曹洞宗における一般的なご葬儀の流れについて、順を追って解説していきます。
①導師(僧侶)入場
②剃髪(ていはつ)
故人様の髪を剃る儀式です。ただし本当に剃るわけではなく、指などを使って剃る仕草をします。
③授戒(じゅかい)の儀式
故人様がお釈迦様の弟子になるために、さまざまな儀式を以って戒律を授けます。
・懺悔文(さんげのもん)
さんげとは、「ざんげ」のことです。故人様が生前犯した罪を悔い改めるための懺悔文が読誦されます。
・洒水(しゃすい)
浄水で、故人様の体を清めていきます。
・三帰戒文(さんきかいもん)
故人様が三宝(仏・法・僧)に帰依することを誓うための読経が行われます。
・三聚浄戒(さんじゅうじょうかい)、十重禁戒(じゅうじゅうきんかい)
導師が用意した法性水を、自らの頭上やお位牌に注ぐ酒水灌頂(しゅすいかんじょう)を行います。
・血脈相承(けちみゃくそうじょう)
血脈(けちみゃく)とは、お釈迦様から弟子への法統が記されたものです。これを祭壇あるいは棺の上に安置します。
④入龕諷経(にゅうがんふぎん)
本来であれば、ご遺体を棺に納める儀式です。ただしこの時点では納棺済みなので、導師が回向文(えこうもん)や大悲心陀羅尼(だいひしんだらに)を唱えます。
⑤龕前念誦(がんぜんねんじゅ)、挙龕念誦(こがんねんじゅ)
龕前念誦は、棺の窓を閉める儀式ですが、ここでは導師の読経が入ります。挙龕念誦の読経は、邪気を払うためのものです。ここで、鼓鈸三通が行われます。
⑥引導法語(いんどうほうごう)
故人様を極楽浄土へ導くための儀式です。導師による念誦が行われます。
⑦山頭念誦(さんとうねんじゅ)
山頭は火葬場を意味します。ここでは、故人様が無事に仏様になれるよう、祈りをささげる読経が行われます。
⑧出棺
導師が回向文を唱え、ふたたび鼓鈸三通が行われる中、棺が出棺されます。
ここからは、曹洞宗におけるご葬儀でのマナーや作法を解説していきます。
曹洞宗では他の宗派と考え方に違いがあるため、ご葬儀に着用する服装に迷いが生じるかもしれません。曹洞宗のご葬儀でも、一般的なご葬儀と服装は同じです。故人様から三親等までの方は格式の高い正喪服を、一般の参列者においては、準喪服(一般的な喪服)を着用します。
男性は喪服・黒い革靴・黒い靴下・黒いネクタイ・白いワイシャツを合わせ、女性は喪服に黒いストッキング(30デニール以下)・黒い型押しのカバン・黒いパンプスを合わせます。
装飾品は、男女とも結婚指輪のみに留めるのが良いですが、1連パールネックレスや一粒イヤリング、またはピアス(8mm珠以下)を付けるだけにとどめるなら問題ありません。
曹洞宗のご焼香は、基本2回ずつです。1度目の焼香(主香)は、右手の人差し指、中指、親指の3本で抹香を摘み、額までおしいただいてから香炉へくべます。
2度目の焼香(従香)は、同じ3本の指で抹香をつまんだ後、そのまま香炉へくべましょう。従香は、1度目の主香を追い炊きするという意味になるので、おしいただかなくても問題ありません。
ただし、会場によっては主香のみ1回だけ、と定められている場合もあります。ご焼香の回数や方法は、会場のスタッフの指示に従って行いましょう。
数珠は、本式数珠、略式数珠の2種類があります。本式数珠とは、宗派ごとに形が変えられ意味を持たせた数珠です。また、略式数珠はどの宗派にも使えるものになり、片手数珠とも呼ばれています。
曹洞宗の本式数珠は看経念珠(かんきんねんじゅ)と呼ばれており、主玉が108個と百八環金という金属の輪が付いています。ただし曹洞宗ではお経をあげる機会が少なく、檀家の方でも看経念珠を持っている方はごく少数のため、略式数珠を持ってご葬儀に参列するのが一般的です。
曹洞宗のご葬儀へ伺うことになった際、香典の額の相場は、他の宗派と同様であり、故人様との関係性により金額が変わります。親族であれば10,000~100,000円、友人知人なら5,000~10,000円、仕事関係の方なら5,000円程度を目安にします。
また、香典を入れる不祝儀袋や表書きに使う薄墨の筆ペンは、コンビニや100円均一ショップ、ネット販売で入手が可能です。曹洞宗で使用する場合は「ご香典」、もしくは「ご霊前」と記載のある不祝儀袋を選ぶと良いでしょう (「お仏前」を使用する場合もあります)。不祝儀袋の半分から下の部分には、薄墨でご自身の氏名を記載します。
曹洞宗のご葬儀を執り行った喪主は、導師(僧侶)にお布施をお渡しします。お布施の金額は正式に定められていませんが、相場としては200,000~600,000円です。曹洞宗のご葬儀では、他の宗派よりも儀式が多く長い時間を要するほか、お招きする導師の人数も多くなるため、金額が高くなる傾向にあるようです。
曹洞宗のご葬儀は、他の宗派と違っていることが多く、同じ曹洞宗でも地域によってマナーや内容が変わることもあります。そういった中でご葬儀を執り行うとなれば、さまざまな点で迷いが起きることもあるでしょう。そのような場合は、菩提寺や葬儀業者の担当者の方へ相談してみるのも一つの方法です。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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