2023-12-01
お墓参りの際、梵字やお経、戒名などが筆記されている木製の長い板が、墓石の後ろに建てられているのを見かけることがあります。この木板は「卒塔婆(そとば/そとうば)」と呼ばれるものです。
卒塔婆を建てるには、寺院への依頼と塔婆料のお渡しが必要になります。しかしながら、卒塔婆を建てる機会は少ないため、相場やマナーがなかなか周知されていかないのも事実です。そこで当記事では、塔婆料の解説や、料金相場、またお渡し時のマナーなどについて詳しくご案内していきます。
卒塔婆は、故人様のご供養のため、お墓と一緒に建てられる木製の札です。卒塔婆を建立するには、菩提寺や霊園に相談して作成してもらう必要があります。その際にかかる費用が「塔婆料」です。
なお、卒塔婆を建てるタイミングに明確な決まりはありませんが、卒塔婆は主に「追善供養」で建てるものとされています。基本的には供養の節目である四十九日・納骨・春や秋の彼岸・お盆・一周忌・施餓鬼会(せがきえ)を目安に建てると良いでしょう。
また、卒塔婆は木製であるため、天候や環境で早くに劣化してしまうこともあります。したがって、取り換えの時期が必ずしも供養の節目である必要はなく、汚れてしまったからという理由で取り換えても問題はありません。
では、卒塔婆を建てるにあたってかかる塔婆料と、よく耳にする「お布施」との違いは一体どこにあるのでしょうか。
まずお布施は、僧侶に戒名を授けていただいたり、読経が行われたりするなどの仏教的儀式の折に、喪主が謝礼として僧侶へ手渡すものなので、明確な金額の決まりはありません。一方、塔婆料は塔婆を建てるにあたっての金額が寺院で決められていますので、指定された金額を支払う必要があります。
つまり、お布施と塔婆料とでは、金額の持つ意味の性質が異なるのです。
塔婆料は、寺院や霊園によって異なりますが、1本につき2,000~10,000円程度の範囲で金額が定められているケースが多いです。価格帯としては、3,000~5,000円程度が一般的ですが、寺院によっては具体的な金額が表示されていないこともあります。したがって、費用を事前に菩提寺の方へ確認しておくと良いでしょう。
なお、塔婆料は施主の支払いが一般的ですが、法要の参列者で分担して支払うこともできます。複数人で金額を分担する場合は、分担者の名前を名簿にまとめ、先に寺院へ渡しておきましょう。
塔婆料のお渡しにあたり、細やかなマナーがあることも忘れてはいけません。ここでは、寺院側に失礼のないよう、塔婆料の用意方法やお渡しのタイミングなどをご説明いたします。
塔婆料は、無地の白い封筒に、定められた金額を入れてお渡しするのが一般的です。また、「御塔婆料」と印字された封筒も市販されていますので、購入されて使用されると良いでしょう。
ただし使用する封筒は、郵便番号の記入欄が印字されているものやお金を横から入れられるもの、茶色いもの、二重封筒は避けます。ご葬儀の折に卒塔婆を建てる場合は、葬儀社に封筒が用意されていることもありますので、確認してみましょう。
また、奉書紙(ほうしょし)という、白い厚手の和紙へ包んでお渡しする方法もあります。半紙でお札を包んだ「中包み」を、その上から奉書紙「外包み」で包みます。奉書紙を使用されたい場合は、中包みと外包みがセットで販売されていますので、容易に入手可能です。
なお、お札は封筒の表面にお札の肖像画が向くようにして入れましょう。新札、旧札どちらを使用しても問題ありません。
塔婆料を入れた封筒には、表面と裏面に記入すべき事柄があります。その際に使用する筆記具は、墨黒の毛筆、または筆ペンを使用しましょう。ボールペンやサインペン、薄墨のペンを使用することはマナー違反になるため避けます。
また、白い封筒を用意した場合、表書き上部には「御塔婆料」「卒塔婆料」のいずれかを記載しましょう。そして、下部には依頼者の氏名、また複数人数の場合は「〇〇家塔婆建立者」と記載します。
中袋には壱・弐・参・拾のような旧字体を用いて、「金〇〇圓」と金額を記載します。ただし中袋がない場合は、封筒の裏面に記載したご依頼主の住所、電話番号の左側に金額を書き足しましょう。なお、複数人数で包む場合、封筒の中に建立者名と金額を記載したメモを入れるのが通例です。
塔婆料は、法要当日にお渡しするようにします。法要が始まる前に僧侶へ挨拶に伺いますが、そのタイミングで塔婆料をお渡しするのが一般的です。
ただし、僧侶に対して塔婆料を直接手渡しするのは、失礼にあたりますので注意しましょう。一番良い作法は、切手盆(きってぼん)または祝儀盆と呼ばれる小さなお盆に塔婆料を乗せ、封筒を僧侶の方へ向けて差し出すことです。切手盆の用意が難しい場合は、袱紗(ふくさ)の上に塔婆料を乗せてお渡しします。その際は、卒塔婆を作成くださったことへの感謝の意を伝えるとより良いでしょう。
卒塔婆は「塔婆(とうば)」とも呼ばれることがありますが、これは簡略的に呼ぶための名称なので、正式名称は卒塔婆です。
そもそも卒塔婆は、その昔インドから中国に渡り、日本へ伝わってきました。卒塔婆とはインドのサンスクリット語である「ストゥーパ」が語源とされています。ストゥーパとは「高く顕れる」という意味で、輪廻から解放された最高の境地のことです。
この言葉が、お釈迦様のご遺骨を納めるために建てられた仏塔にそのまま名付けられました。そして、「ストゥーパ」が中国に渡ってきた際、当て字で「卒塔婆」という漢字に変換され、この言葉がそのまま日本へ渡ってきたのです。
なお、仏塔を元に建設されたのが五輪塔(供養塔)です。そして後日に五輪塔がモチーフとされ、持ち運びが容易な木の板で卒塔婆が形作られました。
卒塔婆を建立する行為には、故人様の追善供養(ついぜんくよう)の意味が込められています。四十九日法要や故人様の命日に行う年忌法要では、卒塔婆を用いて追善供養が行われ、故人様の成仏が無事に叶うよう、ご冥福を願う祈りが捧げられるのです。
仏教には、生きている方が追善供養を行うことで、故人様の善行にもつながるとの教えがあります。また、卒塔婆を建てる追善供養が、善行を積むことと同義と考えられており、その善行は再びご自身に還るものであると信じられているのです。
卒塔婆の形状は細く長いものですが、その中にはさまざまな文字が墨汁やプリントで記されています。その内容は宗派や寺院、土地柄によってさまざまですが、こちらでは一般的な内容を表記します。
・梵字(ぼんじ)
宗派によって変わりますが、主に仏様や菩薩を表した一文字が記されます。
・戒名/法名
死して仏門へ入った故人様のために、僧侶が授けた名前です。
・命日
故人様が亡くなった日が記されます。
・経文/題目
経文や題目が記されます。宗派によりその内容は異なります。
・施主名
卒塔婆を依頼した方の氏名が記されます。
・供養年月日
法要の名称や、卒塔婆建立日または法要実施年月日が記されます。
・梵字
宗派によって、大日如来を示す文字や、仏様を表す文字である「種子」が記載されることがあります。種子(しゅし)とは、仏のタネという意味合いを持ちます。
卒塔婆のご供養は、さまざまな儀式の一環であり、大切な法事の一つです。卒塔婆は、ご遺族だけで建てられるものではなく、寺院や僧侶の助力があって建立できます。したがって、ご依頼の際にはくれぐれも相手方へ粗相のないよう、マナーに気を使いながら手続きを進めていきましょう。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
身内の方に不幸があった年は、そこから1年間が喪中となります。喪中期間中は、さまざまな慶事や祝い事に参列できなくなります。ただし、年末年始における対応は滞りなく行うことが、日本における古くからの一般的な慣習となっているのです。そこで今回は、喪中期間のマナーやはがきの書き方、例文をご案内していきます。
香典返しが届いたら、お礼の連絡が必要か迷ったことはありませんか?基本的にはお礼やお返しは必要ありませんが、お付き合いの程度によっては、返礼品が届いたことを伝えた方が良い場合もあります。 こちらでは、香典返しをいただいたときのマナーや対応、香典返しの到着を伝える際の注意点を含め、手紙やメールを送る際の例文をご紹介いたします。
日本では、喪中期間に控えるべきといわれる行動があります。代表的なものは、お祝い事であるお正月や結婚式です。では、喪中のクリスマスはどのように過ごせば良いのでしょうか。クリスマスは華やかな雰囲気に包まれますが、仏教とは関係のない行事のため、慶事として考えるべきか悩む方も多いことと思います。 そこで当記事では、喪中に控えるべき行動やクリスマスの意味合い、喪中におけるクリスマスの過ごし方を解説していきます。