2024-05-02
お盆の時期に耳にする精霊流し(しょうろうながし)は、日本で行われている弔いの行事です。映画や報道番組などで精霊流しの動画が流れると、幻想的で美しい光景が印象に残りますが、この行事には昔ながらの歴史や深い意味が込められています。
そこで当記事では、精霊流しが行われている地域やその意義、そして精霊船の作り方などについても解説していきます。
毎年お盆の時期になると、故人様の御霊が、あの世へと無事に送り届けられることを願う精霊流しが行われます。精霊流しは、精霊船(しょうろうぶね・しょうりょうぶね)にお供え物などをのせて、海や川に流す昔ながらの伝統的な行事です。
現在、精霊流しは全国で行われているわけではなく、主に長崎県や佐賀、熊本のごく一部で執り行われています。これらの地域では、どのような形で精霊流しが行われているのでしょうか。
精霊流しは、長崎・佐賀・熊本の一部で、お盆に行われている伝統行事です。主に、故人様が亡くなってから、初めてお盆を迎えた魂に対する供養が目的とされています。
大きく立派な精霊船を作成し、船には提灯などが飾られて明るくともされるのが通例です。でき上がった精霊船は、主にご遺族が中心となって持ち上げ、大勢の列をなして川や海まで運び ます。運んで いる間は、魔除けのために派手な音の爆竹を鳴らしますが 、これは中国文化の影響によるものとされています。
精霊流しの由来は諸説ありますが、中でも江戸時代に執り行われていた彩舟流し(さいしゅうながし)の名残であるといった説が有力です。彩舟流しは、通訳や貿易を目的とした唐人が、日本へ訪れる道中で亡くなった際、その方たちのために行われた中国伝統のご供養法でした。
精霊流しの他に、灯篭流し(とうろうながし)という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。いずれも死者の魂をご供養するため、お盆に行われる儀式であるという意味合いは変わりません。
精霊流しは主に長崎県で行われ、大きな精霊船で派手に弔ったり、小さな精霊船にお供え物などをのせたりして、海や川に流す行事のことを指しています。
一方、灯篭流しでは精霊船を使用せず、灯をともした灯篭を川などの水面に浮かべて流し、静かに死者の魂を送るのが主な儀式内容です。灯篭流しは、原爆の被害にあった方々を弔うため、主に広島県で行われます。
精霊流しには、精霊船と呼ばれる船が作られ、ご供養のために使用されます。精霊船は、町や村など大きな組織の単位で大人数を供養する大きな「もやい船」と、小人数を供養する小さな「個人船」の2種類があります。
いずれも魂をご供養する用途は変わりませんが、それぞれの精霊船は、一体どのような大きさや形をしたものなのか見ていきましょう。
個人用に作られている個人船は、数十センチ程度と小さめであり、ご家庭の家紋が付いているものが多いです。一方、お祭りで用いられるものになると、その大きさは1~10mにもなり、船には町名などが記載されるのが一般的です。大きさには制限が設けられており、全長は10m、胴体は7m、幅は2.5mまでになります。なお、担いだ時には高さ3.5mを超えないようにする必要があります。
また、精霊船の形状にはっきりとした決まりはありませんが、その土地特有の伝統的な形もありますので、作成時に不安を感じた場合は地域の方へ伺ってみると良いでしょう。
精霊船は、手作りするのが一般的とされています。材料は木やワラ、竹、ダンボールなどを用いますが、初めてできれいに作成するのは非常に困難です。作成に慣れた地元の方と一緒に作るのがおすすめですが、お店で精霊船や作成キットが販売されていることもあります。
精霊流しは、かつてNHKで放送された連続ドラマ、「精霊流し~あなたを忘れない~」に使用された主題歌でも有名です。楽曲「精霊流し」を歌うさだまさしさんの故郷は長崎県長崎市で、この地方で実際に行われている精霊流しの思い出が、歌詞のベースとなっているようです。
さだまさしさんの自伝書籍を元に、松坂慶子さん主演の映画「精霊流し」も制作されています。この映画で、山本太郎さんが第46回ブルーリボン賞 助演男優賞を受賞されました。
精霊流しなどの行事が各地で行われるお盆は、各場所によってその時期が異なります。お盆では実家への帰省やお墓参り、法事、祭りなど、さまざまな準備に追われる方も多いことでしょう。ここからは、一般的なお盆の準備や過ごし方、期間を解説していきます。
オススメ関連記事
2024年(令和6年)のお盆はいつからいつまで?お盆飾りやお供えの準備について解説
じめじめとした梅雨が明け、暑い夏とともに訪れるのがお盆です。お盆の時期は地域によって異なりますが、世間一般的には、お...
じめじめとした梅雨が明け、暑い夏とともに訪れる...
続きを読むお盆には、新暦(7月)と旧暦(8月)、2種類の期間があります。宗派や地域によってどちらの日程が使われるかは異なりますが、一般的に多いのは旧暦です。
2024年でのお盆期間は、8月13日(火)〜16日(金)の4日間です。新暦をお盆と考える地域では、7月13(土)~16日(火)の4日間となります。
会社におけるお盆休みは、旧暦が適用される場合が多いです。特に今年は8月11日(山の日)が日曜日で、翌日の月曜日が振替休日となるため、土日祝日を休みとする企業の場合は、8月10日(土)~18日(日)まで9日間の大型連休が期待できるでしょう。
お盆では、特に何をしなければいけないという決まりはありません。長期休みを取得できる場合も多いので、海外旅行などへ赴くのも良いでしょう。
しかしながら、お盆は大切な故人様やご先祖様がお戻りになる大切な期間でもあります。心静かにお墓参りを行うのはもちろん、精霊流しや盆踊りへの参列も、現世へお戻りになった御霊に対する弔いになりますので、機会がある方はぜひ参列してみてください。
日本で古くから伝わる精霊流しは、故人様の魂が無事に極楽浄土へ向かうため、祈りをささげる心のこもった伝統行事です。お祭りとして美しい照明を楽しむのも良い慰霊となりますが、故人様との思い出に浸り、一緒に過ごす気持ちを持ちながらの参列もまた素敵なご供養となるでしょう。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
ご家族が亡くなり四十九日が経った後、初めて迎えるお盆を初盆(新盆)といいます。初盆は、故人様の御霊が初めてこの世へ戻る機会であり、昔ながらの慣習に沿いながら、御霊をお迎えする準備を行います。 初盆は人生でそう何度も迎えるものではないため、準備方法や時期などに迷われる方も多いかもしれません。本記事では、初盆を迎える前の詳しい準備方法や、法要を行うための手順、飾り付けなどについて解説いたします。
ご先祖様や故人様の御霊をお迎えするお盆は、日本の夏における大切な風習です。ただし、仏教は13の宗派、分派も含めると56派にものぼり、作法や教えも少しずつ異なるため、お盆における過ごし方や準備などに悩む方もいらっしゃるかもしれません。 本記事では、特に浄土真宗と取り違えられがちな「浄土宗」における、正しいお盆の過ごし方やお盆飾りについて解説いたします。
お盆には旧盆、新盆と呼ばれる時期があり、その日程には1か月ほどの差があります。多くの企業が旧盆の8月をお盆休みとしており、一般的なお盆は8月と認識されることが多いです。しかしながら、7月の新盆にご先祖様をお迎えする地域もあるほか、沖縄では旧盆・新盆のどちらとも異なる日程でお盆の儀式を執り行います。 今回は、旧盆や新盆の時期が異なる理由、そして沖縄特有のお盆の呼び方や時期、意味についても解説いたします。