
公開日2025/09/05|最終更新日2025/09/05
ご葬儀や法要、お盆などで僧侶をお招きし読経をお願いした際には、そのお礼として「お布施」をお渡しするのが一般的です。お布施の金額は宗派や儀式の内容、地域の慣習などによって異なります。また、金額だけでなく包み方や渡し方など、僧侶に失礼のないよう配慮すべきマナーもあります。
本記事では、お布施の金額相場や包み方、渡し方のマナーについて詳しく解説します。
お布施とは、読経によってご先祖様や故人様を供養していただいた僧侶へのお礼であり、ご本尊への感謝の気持ちを表すものです。そのため、縁起の良し悪しにこだわる必要はなく、明確な金額の決まりもありません。一般的な相場に沿った金額であれば、「出してはいけない数字」という考え方は基本的にないとされています。
ちなみに、結婚式やご葬儀、法事で参列者が包む香典やご祝儀などは、お布施とは趣旨が異なります。幸せを祈る気持ちや不幸が続かないよう願う意味を込めて渡すものであり、その際は縁起を担いで金額を決めるのが通例です。たとえば、死を連想させる「4」や苦しみを連想させる「9」、別れを意味するとされる偶数は避ける傾向があります。
お布施とは、僧侶に対して読経などのお勤めへの感謝として渡す金銭のことです。ご葬儀や納骨、年忌・忌日法要など故人様に関わる儀式のたびに、ご供養のため僧侶が読経を行います。そのお礼としてお渡しするのがお布施であり、そこにはご先祖様や故人様を見守ってくださるご本尊への感謝の思いも込められています。
お布施の起源は、古代インドに伝わる逸話にあるとされています。昔、ある村で起きた出来事が、今も尊い話として語り継がれています。
ある日、僧侶が仏教の教えを説きながら各家庭を回っていた際、貧しい一家で説法を終えた後にこう言われました。
「ありがたい説法をありがとうございます。しかし、うちにはお金がないので、これしかお礼ができません…」
そう言って差し出されたのは、薄汚れた一枚の布でした。
それがその家の精一杯の感謝のしるしだと理解した僧侶は、快く布を受け取り寺へ戻り、その布を継ぎ合わせて自らの袈裟(けさ)を仕立て、大切に着用しました。この出来事がきっかけとなり、僧侶の袈裟は複数の布を継ぎ合わせて作られるようになり、その風習は今も受け継がれています。
現代でも、僧侶が身に着ける袈裟は一枚布ではなく、複数の布を組み合わせた継ぎはぎの形が基本で、素材には美しい絹織物が用いられることが多いようです。
当時、説法のお礼として差し出された布が「布(ぬの)を僧侶に施した(ほどこした)」と解釈され、そのまま「お布施」という呼び名が生まれました。やがてこの言葉は、僧侶にお礼として渡す金銭全般を指すようになり、今日まで受け継がれているとされています。
基本的にお布施は僧侶への「お礼」にあたるため、あらかじめ金額を明示している寺院はほとんどありません。行う儀式の規模や状況によって包む額は変わります。しかし、目安となる金額をあらかじめ知っておきたいと考える方も多いでしょう。
ここでは全国的なお布施の相場をご紹介しますが、実際には宗派や地域によって差があります。もし不安な場合は、菩提寺や葬儀社、または地域に詳しい方へ相談して確認しておくと安心です。
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ご葬儀にかかるお布施(戒料は別途)の 目安は、おおよそ100,000~300,000円とされています。宗派の考え方やご葬儀の規模によって金額が変動するため注意が必要です。
なお、僧侶の移動距離が長い場合は、お布施とは別に「御車料」を、また御斎(おとき)に同席しない場合は「御膳料」を別途用意します。いずれもお布施とは別封筒に分けて準備しましょう。
なお、御車料は距離にもよりますが5,000~10,000円程度、御膳料は10,000~20,000円程度が目安です。
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忌日・年忌法要でお渡しするお布施の金額相場を表で示しました。なお、年忌法要は年数が経つごとに規模や金額が少なくなる傾向にあります。以下はあくまで一般的な目安となりますので、周囲や宗派の相場を優先させる方が良いでしょう。
【お布施目安※御車料や御膳料は別です】
| 【忌日法要】 | 【お布施相場】 |
|---|---|
| 初七日 | 30,000~50,000円 |
| 二七日(ふたなのか)~六七日(むなのか) | 5,000~10,000円 |
| 四十九日 | 30,000~50,000円 |
| 百箇日法要 | 30,000~50,000円 |
| 【年忌法要】 | 【お布施相場】 |
|---|---|
| 一周忌 | 30,000~50,000円 |
| 三回忌 | 10,000~50,000円 |
| 七回忌以降 | 10,000~50,000円 |
| 弔い上げ | 50,000~100,000円 |
弔い上げとは、年忌法要の締めくくりとして行う最後の法要のことです。従来は三十三回忌や五十回忌が目安とされてきましたが、近年はご家庭の事情により十三回忌や十七回忌で弔い上げを行うケースも見られます。
初七日から四十九日までは、本来7日ごとに忌日法要を行う習わしがありますが、特に最終日の四十九日(忌明けの日)に重点を置くのが一般的です。この日は仮の白木位牌から本位牌への魂入れや納骨など、重要な儀式が行われることが多いためです。
さらに、初七日(しょなのか)はご葬儀と同日に読経のみで行うケースが増えていますが、その後の二七日~六七日までの法要をすべて行う地域もあります。とはいえ、近年ではこれらの期間の法要を省略し、自宅の祭壇に静かに手を合わせてご供養するご家庭も少なくありません。
また、四十九日を忌明けとするのが一般的ですが、心の整理がつかず納骨を見送った場合、百箇日法要にあわせて納骨を行うご遺族もいらっしゃいます。
納骨とは、骨壺に収めた遺骨をお墓に納める儀式のことです。実施する時期に明確な決まりはありませんが、一般的には四十九日法要とあわせて行われることが多いです。法要のお布施とは別に、納骨のお礼として10,000~50,000円程度を包むのが目安とされます。この際、法要分とは別の封筒に分けて準備しましょう。
ここからは、お布施に関するマナーについてご案内いたします。
お布施を包む際には、基本的に真っ白な無地の封筒を使用します。購入先は100円ショップや文房具店で、葬儀用の水引付き袋と同じ売り場に並んでいることが多いです。なお、郵便番号枠などが印刷された封筒は使用しないよう注意しましょう。
水引には魔除けの意味があるとされますが、お布施では必要ないのが一般的な考え方です。市販の白封筒に「お布施」と印字されたものがあれば、それを使っても問題ありません。
ただし、袋の形式や書き方には地域ごとの慣習があるため、不安な場合は菩提寺や地域に詳しい方へ確認しておくと安心です。表書きや裏書きは濃い墨の筆ペンで記入し、書き損じに備えて予備の封筒も用意しておきましょう。
なお、お札を入れる際は、肖像画が封筒の表面かつ上向きになるよう揃えて封入してください。香典の場合は「事前に用意していた=不幸を予期していた」と受け取られる恐れがあるため、新札を避けるのが一般的なマナーですが、お布施においては綺麗な新札を用いてかまいません。
まずは毛筆や濃い墨の筆ペンを用意しましょう。普段使い慣れているボールペンとは書き心地が異なるため、筆ペンに慣れていない方は事前に別の紙で練習しておくと安心です。
お布施袋の表面には、中央上部に「御布施」または「お布施」と記載します。あらかじめ印字されている場合はそのまま使用して構いません。その下、中央寄りの位置に氏名もしくはご遺族の名字「○○家」と記載します。
裏面の左下には、住所と包んだ金額を縦書きで記入します。専用の記入欄が印刷されている場合は、その指示に従いましょう。金額は旧字体を用いるのが一般的で、たとえば5万円の場合は「金伍萬圓也」と記載します。
お布施は、ご葬儀や法事の開始前、または終了後にお渡しするのが基本です。もし当日にお渡しできなかった場合は、できるだけ早めに寺院を訪問し、お渡しするようにしましょう。
お布施は袱紗(ふくさ)に包んで持ち運びます。お渡しする際は、袱紗から封筒を取り出し、袱紗の上または切手盆に置き、表書きが僧侶または受付の方に向くようにして差し出します。その際に一言添えると、より丁寧な印象になります。
【読経前】
・本日はお世話になります。どうぞよろしくお願いいたします。
・本日は、お勤めいただきありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【読経後】
・本日は故人のためご供養をいただき、ありがとうございました。
・本日はお世話になり、ありがとうございました。ささやかですがお納めください。
【後日】
・先日は大変お世話になりました。お蔭様で滞りなく○○を見送ることができました。誠にありがとうございました。
冠婚葬祭では、縁起を意識して金額を決めることが一般的です。その際は縁起を担いで額を決めることが多いでしょう。ただ、お布施はお祝い事や弔事で用意する性質のものではなく、あくまで僧侶へのお礼とご本尊への感謝で用意するものです。ゆえに縁起を担いだ金額を考えずとも良いということになります。
お布施は、基準の相場や地域の風習にしたがって準備し、僧侶へ失礼の無いよう誠意を込めてお渡しするようにしましょう。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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