
公開日2021/05/14|最終更新日2025/07/25
2025年、65歳以上の高齢者が総人口の30%(3619万7千人)となり、超高齢化社会に突入している日本。医療の進歩と共に平均寿命が延びている今、増えてきているのが「老衰死」です。ご高齢のご家族と生活されている方の中には、老衰死に備えて準備をしたいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、そもそも老衰死とはどういう状態なのか、事前に備えておきたいことなどについてご紹介します。
加齢により、身体の機能が徐々に衰えることを「老衰(ろうすい)」といいます。つまり老衰死とは、病気や事故で亡くなるのとは違い、身体能力及び臓器機能が少しずつ衰え、死に至ることなのです。
年齢を重ねれば、全身の細胞機能は徐々に低下していき、体を動かす筋肉や臓器の動きも弱っていきます。この衰えにより、食事による栄養の吸収も難しい状態になるでしょう。こうして全身が少しずつ機能しなくなっていくため、日常生活が困難な状態となるのです。
これは、病気などではなく自然の摂理です。細胞が老化して活動が弱まると生命の維持は難しくなり、人は死に至ります。高齢により全身の機能が衰えて自然に亡くなった場合、医学的にも「高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない」とされ、老衰死と定義づけられるのです。
近年では、老衰で亡くなる方が増加傾向にあります。厚生労働省が発表した死因ランキングの最新情報によると、男性では1位の癌に続いて2位が心疾患、そして老衰が3位につけています。一方、女性に至っては、癌や心疾患を抜いて老衰が1位となりました。
なお、老衰が増えた原因としては、生活習慣における個々の改善策や、医療水準の向上によるものが大きいといわれていますが、厚生労働省の死亡診断書(または死体検案書)における基準についての指導も関係しています。
老衰死の方は最期に心臓が動かなくなるため、これまで死因が心不全とされてきた方が多かったのです。しかしながら、正しい死因統計を導く目的で1995年に心不全の診断基準は大きく改定されました。このように、心不全と診断される例が減ったことも、老衰死の増加の一因と考えられます。
厚生労働省は『死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル』において、死因としての老衰は「高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合のみ」と定義していますが、何歳以上の方が亡くなられた場合、老衰死というのかに関しては細かい定義はありません。
そのため、死因として何歳以上の方が亡くなられたら老衰死とされるのかについては、医師によって意見が分かれており、実際に医師を対象にした調査において「80歳以上を老衰とする」という回答が多くなったという結果もあるようです。
また、厚生労働省が発行した最新の『令和元年簡易生命表』では、2023年(令和5年)の日本人の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.14歳となっています。そのため、平均寿命を超えた高齢者が病気をかかえていない状況で亡くなられた場合において老衰とする医師もいらっしゃるようです。
ここからは、老衰の前兆となる症状を紹介していきます。以下の症状が多く当てはまるようであれば、周りの方もある程度の心構えや準備が必要となるでしょう。なお、急激な体調不良などは病気であることも考えられますので、救急車などで対処することも必要です。
老衰の兆候がまずあらわれる症状としては、握力の低下・歩行速度の低下・転倒しやすくなるなどの筋力の低下、つまり、さまざまな身体機能の衰えにより日常生活動作が困難になります。また、内臓器官の機能も衰えていくため、循環器や呼吸器に関するトラブルが増えるのも老衰の特徴です。
老衰が進行すると、それまでと同じ食事をとること自体が難しくなります。これも細胞の衰退が原因です。歯が弱り咀嚼が困難になるほか、味覚や嗅覚も衰えるため、食欲がなくなります。結果、栄養不足に陥り、体の機能の弱まりが加速してしまうのです。
食欲がなくなれば、当然体重も減少していきます。食事ができたとしても、栄養を吸収する器官すら衰えているので、結果的に栄養は吸収されにくくなります。よって、徐々に減少する方もいれば急激な体重の減少が見られる方もいます。
また、脳機能の低下などから意識を保つことが難しくなることもあります。結果、睡眠時間の増加に繋がるのです。また、眠りの質も落ち込むので、途中で目が覚めてしまうことも多く、起きている間もスッキリできません。
症状が進行すると昼夜問わず眠気が襲ってくるようになるため、寝ている時間はますます増え、最終的には24時間寝たきりとなることが多いです。
大切なご家族に老衰の前兆が見られた場合、最期を迎えるための備えをしましょう。備えを怠ってしまうと、いざという時に適切な行動がとれなくなってしまいます。そのため、感謝を表すためにも早めの準備が重要です。以下では老衰死に備えて事前にやるべきことをまとめさせていただきましたので、ご参照ください。
老衰の進行度は人により様々ですが、食事をとられなくなってから1週間程度で死を迎えてしまうことが多いとされています。突然死と異なり、老衰死は最期を迎えるための時間が残されています。
しかし、いざ現実に直面してしまうとあっという間に時間が過ぎてしまうでしょう。そのため、本人の意識レベルが低下してしまう前に、感謝の気持ちや楽しかった思い出、わだかまりへの謝罪など、伝えたいことは早めに伝えましょう。
ご本人の体調が悪化してしまった場合、ご家族がご本人に代わって判断をしなくてはいけません。ご本人の意思を理解するためにも延命治療などに関しては事前に話し合っておくことが重要です。
一番優先すべきは、ご本人が意思疎通の出来るうちに「どのような最期を迎えたいのか」を確認することです。以下の項目は特に意識して伺っておくと、ご家族の方も後悔しないで済むでしょう。
・最期を過ごす場所…自宅で静かに見守って欲しい、病院で苦しみを感じない治療をして欲しいなど
・意思表明が難しい場合の判断方法
なお、寝たきりの状態になる前に、日頃付けている日記やエンディングノート、遺言書など、ご本人の遺志が確認できる書類がないかも調べておきます。そして、ご本人とご家族双方で納得できる治療の方法もできるだけ具体的に取り決めておきましょう。
なお、これまでの延命治療として、酸素投与や胃瘻などの手術、点滴など、病院ではできる限りの処置がおこなわれてきました。ただし老衰と診断された場合、無理な延命治療は逆にご本人へ負担を掛けるとの考えが浸透してきており、近年では老衰死まで無理をさせずにそっと見守るケースも増えているようです。
ご本人の意思を尊重したご葬儀にするためにも、事前に見送り方を尋ねておきましょう。ご葬儀はご本人と最期のお別れとなる大切な場です。できる限りご本人のご希望に寄り添ったご葬儀でお送りできるよう、悔いの残らない話し合いをしておくことが大切です。
なお、ご自身の体調や環境の変化などによってご本人のご希望が変わる場合もあります。1回だけでなく、定期的な話し合いの機会を設けましょう。ご本人が周囲にお願いしたいことを明確にしておけば最期の時間を穏やかに過ごすことができるでしょう。
医療の発達によって高齢化が進んだ現代では、どうやって安らかな最期を迎えるのかという関心は、より一層の高まりを見せています。大切なご家族のお見送りの形や費用などの悩みや疑問がありましたら、お気軽にセレモニーまでお問い合わせください。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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