
公開日2025/11/28|最終更新日2025/11/28
近年、ご葬儀の形式は多様化しており、従来の一般葬だけでなく、一日葬や直葬、家族葬など、小規模なスタイルを選ぶ方も増えてきました。家族葬はその中でも、ご家族や近しい親族を中心に見送る方法として広く知られるようになっています。
とはいえ、家族葬を選ぶにあたり、参列者をどこまで呼ぶべきか、親戚への連絡をどうするかなど、悩みや迷いが生じやすいのも事実です。
本記事では、家族葬を検討する際に知っておきたいポイントとして、家族葬が選ばれる背景や注意点、参列者の範囲を決める際の考え方などを、できるだけ分かりやすく解説します。
家族葬とは、正式な定義はありませんが、「家族を中心に、近しい親族や親交のあった少人数で見送るご葬儀の形式」のことを指します。人数の目安としては、10〜30名ほどで行われることが多いとされています。
これに対し、一般葬とはご近所や知人、会社関係者など幅広い方々が参列する形式とされます。
一般的には、配偶者を含むご家族のほか、数親等内の親族や親しい友人までを参列者とすることが多いようです。一方で、同居家族だけに絞り、10名未満のごく小規模で行うご家庭もあります。
家族葬の中には、ご家族だけで静かに見送りたいという理由から、親戚を招かない形を選ぶ方もいます。では、なぜそのような判断に至るのでしょうか。ここでは、家族葬で親戚を呼ばない場合に見られる主な理由を紹介します。
ご葬儀の場では、参列者への挨拶や案内、会食の準備など、喪主やご遺族が行う対応が少なくありません。大切な方を亡くした直後は心身ともに負担が大きく、こうした応対が負担に感じられる場合もあります。
そのため、あえて親戚を広く招かず、ご家族だけで見送ることで、慌ただしい準備や気遣いを最小限にとどめたいと考える方もいます。参列者を限定することで、対応に追われることなく、落ち着いて故人様との時間を過ごしたいという思いが背景にあることが多いようです。
故人様との別れを、落ち着いた雰囲気の中でゆっくりと過ごしたいという思いから、あえて親戚を招かない形を選ぶご家庭もあります。大勢が集まるご葬儀では、どうしても会場がにぎやかになり、故人様と向き合う静かな時間を取りにくい場合があります。
家族葬で参列者を最小限にすることで、故人様との思い出を振り返ったり、気持ちを整理したりする時間を確保しやすくなります。周囲に気を遣わず、それぞれが自分のペースでお別れできる点が、この選択の背景にあるようです。
家族葬を選ぶ背景には、参列者への気遣いもあります。遠方に住む高齢のご親族に負担をかけたくないという思いから、あえて案内を控えるケースもあります。また、普段あまり交流がない親族については、無理に参列を求める必要はないと判断するご遺族も少なくありません。
参列者が少ない場合、会場の広さや会食の準備などにかかる費用はある程度抑えられます。しかしその一方で、香典の数も減るため、最終的な支払いの多くを喪主やご遺族が負担する可能性があります。この点はあらかじめ理解しておく必要があります。
家族葬で親戚を招かずに少人数で行う場合、落ち着いた環境で故人様と向き合える安心感があります。一方で、親族を呼ばないことで生じる可能性のあるリスクにも目を向ける必要があります。ここでは、そうした家族葬ならではのデメリットについて解説します。
「参列者が少なければ、葬儀費用を抑えられる」と考えられがちですが、必ずしもそうとは限りません。たとえば、30~50人規模になると会場費や会食費は増えますが、その分香典も多く集まるため、ご遺族の実際の負担額が想定より軽くなるケースもあります。
一方で、参列者がごく少人数にとどまる場合は注意が必要です。例えば、10名ほどを想定した小規模会場を5〜6名で使用しても、会場費は人数ではなく会場そのものに対して発生するため、料金は変わりません。また、参列者が少ないことを理由に、僧侶へのお布施が減額されるわけでもありません。
そのため、香典がほとんど集まらないまま、葬儀社や僧侶への費用を喪主やご遺族が全額負担することになります。ご家族だけでゆっくりと見送れるメリットはありますが、費用面の負担が増える可能性も踏まえたうえで、参列者の人数を検討することが大切です。
ご親族には、ご家族だけでご葬儀を行うこと、あるいはすでに執り行ったことを適切なタイミングでお知らせする必要があります。その際は、伝える時期や文面に配慮することが大切です。
また、後日、参列できなかった親族や故人様と親しかった方々が弔問に訪れる場合もあり、1~2週間ほどは来客対応が続く可能性があることも念頭に置いておくとよいでしょう。
ご親族とは、日頃の交流の有無にかかわらず、長く関係が続く相手です。そのため、ご葬儀に関してはできるだけ行き違いや誤解は避けたいところですが、実際には思わぬトラブルに発展することもあります。主な理由としては、次のような点が挙げられます。
・ご葬儀に対する慣習の違い
・事後の連絡になったことへの不満
・直接お別れしたかったという気持ち
ご葬儀に対する考え方は人によって異なり、家族葬という少人数の形式に納得しにくい方や、宗教的な理由から従来のご葬儀を望む方もいます。そのため、参列を控えていただく親族には、ご葬儀後に訃報とあわせて家族葬にした理由を丁寧に伝えることが大切です。文中に「故人の遺志」を添えておくことで、事情を理解してもらいやすくなります。
ここからは、ご親族を呼ばない場合に起こりうるトラブルをできるだけ回避するための文面について、例文と共に解説していきます。
故人様亡き後は、喪主が3親等以内のご親族へいち早く連絡しますが、参列をお断りする際は相手の方に不快な思いをさせることのないよう細心の注意を払いお伝えすることが大切です。
ご無沙汰しております。
お忙しいところ、突然のご連絡となり申し訳ございません。
○○(故人の氏名)の息子、△△です。
昨夜、父 ○○ が永眠いたしました。
生前は父がお世話になり、心より御礼申し上げます。
通夜および葬儀につきましては、父の生前の希望により家族葬で執り行うこととなりました。
誠に恐縮ではございますが、ご参列ならびにご厚意やご弔問につきましては、父の意向を尊重し辞退させていただきます。
なお、ほかの皆様へは葬儀後にあらためてご報告いたしますので、この件につきましては内々にお取り計らいいただけますと幸いです。
ご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解のほどお願い申し上げます。
件名 ◯◯◯◯(故人様のフルネーム)訃報のご連絡
祖父 ◯◯◯◯儀
去る◯月◯日 享年九十二歳にて永眠いたしました
通夜および葬儀につきましては
故人の生前の意向により 家族のみで執り行う予定でございます
誠に勝手ながら ご厚志ならびにご弔問は
祖父の遺志を尊重し ご辞退申し上げます
まずはメールにて略儀ながらご通知申し上げます
生前賜りましたご厚情に心より御礼申し上げます
家族葬では、ご葬儀の後にハガキや手紙で訃報を伝える手段を取る方も多いです。故人様が亡くなり、ご家族のみでご葬儀が行われた事などを盛り込み、丁寧な文面でお伝えします。なお、訃報を文章で通達する場合は、メールと同様に句読点を用いないよう気をつけましょう。
母 ◯◯◯◯儀
かねてから病気療養中のところ 去る✕月○日に永眠いたしました
謹んでご通知申し上げます
葬儀におきましては 誠に勝手ながら 母の遺志により ✕月△日に家族のみにて執り行いました
ご香典 ご供花 ご弔問に関しましても 生前の母の希望を尊重し 辞退申し上げます
すぐにお知らせすべきところでございましたが ご通知が遅れましたことをお詫び申し上げます
ここに生前中賜りましたご厚誼に深く感謝申し上げます
令和○年 △月○日
喪主 ◯◯◯◯
謹啓
◯月△日 祖父◯◯◯◯が死去いたしました
葬儀におきましては 生前の祖父の希望に従い 家族のみで執り行いました
誠に勝手ではございますが 祖父の遺志により
ご香典 ご供花 ご弔問などのお気遣いはご遠慮させていただきます
本来ならば早速申し上げるべきところ ご通知が遅れましたこと ご容赦願います
ここに生前中賜りましたご厚誼に深謝し 謹んでご通知申し上げます
今後とも変わらぬご厚誼を賜りますよう お願い申し上げます
謹白
喪主 ◯◯◯◯
家族葬で招く範囲には、法律上の決まりはありません。故人様の意思やご遺族の体調、予算などを踏まえながら、無理のない範囲で参列者を決めて問題ありません。
ただし、地域の慣習や宗教観によっては、少人数のご葬儀に理解を示しにくい方がいる場合もあります。そのため、どれだけ配慮していても、誤解が生じることは考えられます。こうした行き違いを防ぐためにも、故人様の意向やご遺族の判断について、できるだけ丁寧に伝え、周囲の理解を得ることが大切です。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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