2020-01-31
弔問の際やお墓参りの際にお線香をあげるという行為ですが、この行為には3つの意味が込められていると言われています。
「死後の人間が食べるは匂いだけで、善行を行った死者は良い香りを食べる」という記述が仏教経典である「倶舎論(くしゃろん)」にあるように、故人様がお亡くなりになってから四十九日を迎えるまでは、線香を食べ物とすると仏教では考えます。これは「食香」と呼ばれ、地域や宗派によっては、四十九日を過ぎるまで線香の火を絶やさないように務めるのはこのためです。
仏教が生まれたインドでは、高貴な方と接する際は必ずお線香を焚く作法があります。これは、仏様が説教の中で、俗塵(ぞくじん)つまり、日常(俗世間)でいつの間にか汚れてしまった心を清めるためにお香を焚いて清めるよう説いたからだと言われています。
仏教では、お線香の煙には、それを通して仏様とお話をするという意味があります。つまり、お線香の煙が、あの世の故人様とこの世の私たちの橋渡しをしてくれるのです。お線香をあげて手を合わせ、故人様に思いを馳せ、自分がこの世に生まれたことを感謝することは、お線香によって故人様と心を通わせることに他なりません。
お線香の本数を何本にするかは、その宗派によって決められています。日々のご供養はご自身の宗派で普段行っている作法の本数でお線香をあげましょう。なお、弔問先では故人様の信仰されていた宗派に合わせた本数でお線香をあげますが、故人様の宗派が分からない時は、事前にご遺族に確認しておきましょう。
以下に宗派ごとのお線香の本数やお線香の置き方についてまとめましたので、ご参考にしてください。
宗派 | お線香の本数 | お線香の置き方・立て方 |
---|---|---|
天台宗・真言宗 | 3本 ※ | お線香3本に同時に火をつけ、香炉の中に立てる。こちら側に1本、お仏壇側に2本と逆三角形になるように立てる。 |
浄土宗 | 1本 | お線香に火をつけ、香炉の真ん中に立てる |
浄土真宗本願寺派 | 1本を2本に折る | お線香1本を2つに折り、その2本に火を同時につけ、香炉の中で火が左横になるように寝かせて置く。 |
真宗大谷派 | 1~2本を折る | お線香1~2本を2つに折り、それらに火を同時につけ、香炉の中で火が左横になるように寝かせて置く。 |
臨済宗・曹洞宗・日蓮宗 | 1本 | お線香に火をつけ、香炉の真ん中に立てる。 |
※天台宗や真言宗はお線香の本数は3本ですが、一般的に四十九日を迎えるまでは故人様の枕元に立てるお線香は1本だけになります。尚、四十九日前であっても、お仏壇にあげるお線香ならば3本であっても構いません。
お線香を1本立てる時は香炉の真ん中になるように立てますが、複数人でお線香をあげていく時は、香炉の空いているスペースにお線香を立てましょう。また、お線香を2本あげる時は、「2本くっつけて立てる」「間を空けて立てる」のどちらでも構いません。ただし、他の方がこれからお線香をあげる場合は、スペースを確保するために2本をくっつけて立てるのがよいでしょう。
先の「宗派によって変わるお線香の本数」で取り上げた天台宗と真言宗は、お線香を3本立てますが、お仏壇側に2本、こちら側に1本立てて、逆三角形になるように配置します。
お線香に火をつける時は、直接ライターなどで火をつけてはいけません。正しくは、ろうそくの火を使って、お線香の本数に関わらず、まとめて手に持ったお線香に火をつけます。ろうそくに火が灯っていない時は、まずろうそくに火をつけてからお線香に火をつけましょう。
また、火をつけたお線香に直接息を吹きかけて消すのもマナー違反です。10㎝程度下にスッと引いて消す作法もありますが、こちらは慣れていないと無理やり振り消しているような印象を与えてしまいますから、お線香を持った手と逆の手であおいで消しましょう。
弔問でご遺族のお宅に到着したら、まずはご挨拶をして、それからお仏壇の前に進み、お線香をあげさせていただきます。
地域や地方によって異なることはあるものの、一般的なお線香のあげ方は以下のような流れになります。
地域や地方によって異なる事はあるものの、一般的なお線香のあげ方は以下のような流れになります。
年齢を重ねるにつれて人間関係は広がり、ご葬儀や弔問の機会も必然的に増えていきます。なお、司式者や喪主からお線香のあげ方について指示があった場合は、そちらを優先して指示に従いましょう。
なにかと忙しい毎日を送る私たちですが、お墓参りやお仏壇に手を合わせる時は、お線香をあげて心を静めて、故人様やご先祖様と対話をしてみましょう。
55年以上の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。