
公開日2020/12/04|最終更新日2026/07/17
葬儀は、人生において数少ない経験であり、特に自分が「送る側(遺族)」の立場になると、深い悲しみの中で何をすべきか戸惑うものです。しかし、葬儀という場において、ご遺族様の振る舞いや身だしなみは、故人様の尊厳を守り、参列者への感謝を伝える重要な役割を果たします。
「遺族」は単なる親族としての参列者ではなく、葬儀の主催者側の一員です。本記事では、遺族としての正しいマナーを身につけ、落ち着いて大切な方をお送りするためのポイントを詳しく解説します。
葬儀における「遺族」と「親族」の違いを正しく理解しておくことは、座る位置(席順)や焼香の順番を決める上で非常に重要です。
一般的に「遺族」とされるのは、故人様と血縁や縁組が極めて近い以下の方々です。
・配偶者
・子ども(およびその配偶者)
・両親
・祖父母
・孫
・兄弟姉妹
これら以外の方(おじ・おば、いとこなど)は「親族」として扱われるのが一般的です。
ご遺族様は、喪主を支えながら、弔問客への対応や葬儀社との打ち合わせ、式次第の進行確認などを行います。特に会葬者からの挨拶を受ける機会が多いため、常に「見られている」という意識を持ち、清潔感と品位のある振る舞いが求められます。
ご遺族様は参列者よりも格上の「正喪服」を着用するのが伝統的なルールでしたが、現代では遺族・参列者ともに「準喪服(ブラックスーツ・ブラックフォーマル)」を着用することが一般的になっています。ただし、だらしなく見えないよう細部への配慮が必要です。
・服装: ブラックスーツ(漆黒で光沢のないもの)。ダブル、シングルはどちらでも構いません。パンツの裾はシングルが正式です。
・シャツ: 白無地のレギュラーカラー。ボタンダウンはカジュアルなため避けます。
・ネクタイ: 黒無地。結び目にディンプル(くぼみ)を作らないのがマナーです。ネクタイピンは使用しません。
・靴・靴下: 黒の靴下。靴は黒の革靴で、内羽根式のストレートチップが最も適しています。金具付きやエナメル、殺生を連想させるワニ革などは厳禁です。
・服装: 黒のアンサンブル、スーツ、またはワンピース。スカート丈は膝が隠れるもの(正喪服ならふくらはぎ丈)を選びます。
・ストッキング: 黒の無地。薄手のもの(20デニール程度)が基本です。厚手のタイツはカジュアルに見えるため、冬場以外は避けるのが無難です。
・アクセサリー: 原則として外します。結婚指輪と、涙の象徴とされるパールのネックレス(一連のもの)のみ許容されます。
・メイク・髪型: 派手な色は避け、ナチュラルな「片化粧」を心がけます。長い髪は耳より下の位置で黒いゴムなどで一つにまとめます。
・制服がある場合: 学校の制服が正式な礼装です。色が派手であっても問題ありません。
・制服がない場合: 白いシャツやブラウスに、黒、紺、グレーなどの落ち着いた色のズボンやスカートを合わせます。靴も派手なスニーカーは避け、黒や濃紺のものを準備しましょう。
葬儀当日は慌ただしくなるため、以下の持ち物は前日までに一つのバッグにまとめておきましょう。
・数珠(じゅず): 宗派に合わせたもの、または略式数珠。遺族として焼香の回数も多いため、必須アイテムです。
・袱紗(ふくさ): 僧侶へのお布施などを包むために必要です。弔事用には紺、グレー、紫などの寒色系を使用します。
・ハンカチ: 白または黒の無地。涙を拭う場面が多いため、清潔なものを用意します。
・香典返し・礼状: 受付を親族が手伝う場合に確認が必要です。
・小銭・予備のストッキング: 飲み物の購入や、急な伝線の予備として持っておくと安心です。
遺族の挨拶は、流暢に話すことよりも、故人様への想いと参列者への感謝を「自分の言葉」で伝えることが大切です。
「本日はお忙しい中、亡き父(母)のためにご弔問いただき、誠にありがとうございます。皆様の温かいお言葉に接し、父もさぞ喜んでいることと存じます。明日の葬儀・告別式は○時より執り行います。本日は誠にありがとうございました。」
「皆様、本日は夜遅くまでありがとうございました。父の思い出話をお聞かせいただき、私どもも慰められる思いでございます。夜も更けてまいりましたので、このあたりでお開きとさせていただきます。明日の告別式も、何卒よろしくお願い申し上げます。お帰りの際はお足元に十分お気をつけてお帰りください。」
「遺族を代表いたしまして、一言ご挨拶申し上げます。本日はご多忙の折、最後までお見送りいただきまして、厚く御礼申し上げます。故人が生前に賜りました数々のご厚情に対し、深く感謝いたします。残された私共一同、故人の教えを胸に歩んで参る所存です。今後とも変わらぬご指導を賜りますようお願い申し上げ、挨拶とさせていただきます。」
「皆様、本日は最後のお別れにお集まりいただき、誠にありがとうございます。今、○○(故人名)は、皆様に見守られながら旅立とうとしております。これからは皆様からいただいたご厚誼を宝物として、静かに眠りにつくことでしょう。温かいお見送りを、本当にありがとうございました。」
「恐れ入ります。」「お心遣い、痛み入ります。」「生前は大変お世話になりました。」
※短い言葉で、会釈を添えてお返しするのがマナーです。
葬儀の場では「忌み言葉」を避けるのが古くからの習わしです。
・重ね言葉: 「たびたび」「ますます」「重ね重ね」など(不幸が重なることを連想させるため)。
・直接的な表現: 「死ぬ」→「逝去する・急逝する」、「生きている時」→「生前」と言い換えます。
・不吉な表現: 「消える」「大変なことになる」などは避けましょう。
近年増えている「家族葬」や「一日葬」では、一般参列者がいない分、マナーが簡略化されがちですが、遺族同士でも敬意を忘れないことが大切です。
・周囲への配慮: 家族葬であっても、ご近所の方などが弔問に来られた際は、丁寧に対応しましょう。
・葬儀スタッフへの挨拶: 葬儀社の担当者や司式者(僧侶など)は、共に式を作り上げるパートナーです。開始前と終了後の挨拶を欠かさないようにしましょう。
ご遺族様は葬儀において、心身ともに大変な負担を強いられます。すべてのマナーを完璧にこなそうとする必要はありません。一番大切なのは、参列してくださった方々に対し、「故人のために集まってくれてありがとう」という感謝の気持ちを持って接することです。
身だしなみを整え、落ち着いて挨拶を述べることは、その感謝の気持ちを形にする手段にすぎません。本記事でご紹介した基本を押さえ、心を込めて大切な方の最後をお見送りしましょう。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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