公開日2025/05/30|最終更新日2025/05/30
お通夜やご葬儀に参列した際、一連の儀式が終わった後に食事が振る舞われますが、その時にはお酒も用意されます。お酒はお祝いのイメージが強いかもしれませんが、悲しみの場でいただくお酒にも大切な意味が込められているのです。当記事では、ご葬儀でお酒が出される理由、参列者がお渡しする際のマナーについて解説いたします。
ご葬儀の最後に振る舞われる食事では、日本酒やビールなどのお酒も一緒に出されるのが一般的です。これは、故人様の死を偲ぶ意味、参列者に対する感謝の気持ちが込められています。
米は古くから「生命力の源」として大切に扱われてきた食材であり、日本酒は生きている人々の心身を清め、死の穢れを遠ざけると信じられてきました。その昔、日本には故人様のご遺体をすぐに埋葬せず、喪屋(もや)と呼ばれる建物に数年寝かせ、歌や踊りを行いながら飲食をともにするしきたりがありました。喪屋とは、ご遺族が故人様とともに喪中期間を過ごすために建てた家のことです。
この慣習は殯(もがり)と呼ばれ、故人様の霊をご供養すると同時に、お酒によって死の穢れを祓い、災いを遠ざけるために行われてきました。
仏教では、故人様が生前遺した金銭で、さまざまな方々に食事やお酒を施すことで徳が積まれるといった教えがあります。徳を積めば故人様は極楽浄土に旅立つことができ、人々はお酒や食事によって生命力を高められると信じられています。この考えが広く浸透し、現代でも参列者に食事やお酒を振る舞う習慣が残っているのです。
ここからは、お通夜やご葬儀、法事などで振る舞われるお酒について解説していきます。
お通夜でお酒が振る舞われるのは、儀式が終わった後です。かつて一晩中に行われていたお通夜も、近年では2時間前後で済まされることが多く、一連の儀式の後で、参列した方々に食事や飲み物が振る舞われます。
このタイミングで出される食事を「通夜振る舞い」と呼びます。かつての通夜振る舞いは主に精進料理でしたが、近年ではおめでたい食材や殺生を連想させる食材などを除いた軽食やオードブルをいただくのが一般的です。
この時に、ビールや日本酒も振る舞われます。料理は故人様のご供養のためにいただき、お酒は死の穢れを払うためにいただくものとされています。無理のない範囲でいただき、静かに故人様のご冥福を祈りましょう。
ご葬儀や初七日法要、火葬の後で、参列者の方々に振る舞われる食事は「精進(しょうじん)落とし」と呼ばれています。食事の内容はお酒と精進料理です。かつて、精進落としは忌明け法要(四十九日)の儀式後に提供されていましたが、現代ではご葬儀後の会場、もしくは火葬場でいただくのが主流です。
法要後の食事は、参列者に向けた会食として、お酒や食事が振る舞われます。会食は、参列者への感謝とお清め、さらに故人様の魂を慰めるために行われます。
ここからは、ご葬儀においてお酒を振る舞うマナーを解説していきます。参列者の立場でも食事前の発声や言葉遣いなど、気をつけるべき点はほぼ同じですので、ぜひ覚えておきましょう。
弔事の食事でお酒をいただく際、「乾杯」といった挨拶の言葉は用いません。その代わりとして、静かに「献杯(けんぱい)」と言いましょう。
乾杯は、お祝い事や慶事で使われる祝福の言葉です。一方の献杯は、故人様に敬意と弔いの気持ちを込めて杯を捧げるという意味があります。
献杯の場合、最初に手に持つのは日本酒です。日本酒が入った杯は、胸の辺りの高さにとどめ、控えめに差し出してから「献杯」と静かに発声します。なお、地域によっては献杯を行わないところもありますので、不安な場合は事前に確認しておくと良いでしょう。
喪主や施主の挨拶は、献杯の前に行います。挨拶は、1~2分程度で手短に行いましょう。また、献杯するまでは、お酒や食事に手をつけないようにします。
死や殺生を連想させる「忌み言葉」を使用しないように注意しましょう。喪主の挨拶はもちろん、食事中の会話においても同様です。
故人様がお酒を好んでいた場合は、お供え物にお酒を持参するのも良いでしょう。その際は、常温保存できる日本酒やビール、ウイスキー、焼酎などがおすすめです。
なお、宗派や地域によっては、戒名をもらってから飲酒しない「不飲酒戒」の考え方を採用しているケースもあります。お供え物として持参する前に、一度確認しておくと良いでしょう。
お酒をお供えする際には、「外のし」をつけるのが一般的です。表書きは上部中央に「御霊前」または「御供」、四十九日以降は「御仏前」と記載し、下部中央に参列者のフルネームを記します。
名前は、連名で3人まで記載できます。4人以上の場合は、中央に代表者の名前を記載し、横に「有志一同」と記入しましょう。
ご葬儀の際いただくお酒には、故人様を偲ぶことだけでなく、死の穢れを払い、参列した人々を浄化へ導くといった意味が込められています。振る舞われることがあれば、適量をいただき、生前の故人様との思い出について心を馳せる時間を過ごしましょう。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
お通夜での挨拶は、故人様の死に際して、参列者にこれまでのお礼を伝える大切な役割を担っています。一体何を話せば良いのか、参列者や僧侶に失礼のない言葉選びはできているかなど、悩む方も多いのではないでしょうか。そこで当記事では、長男が喪主を務める際に行う挨拶の構成や例文、注意点などをご紹介していきます。
最終更新日2025/07/11
大切な方の訃報を突然受けた場合、お返事として「お悔やみの言葉」を送るのが日本人の慣習です。しかしながら、お悔やみの言葉を伝える際は宗教によってマナーが異なるため、お返しは慎重にお伝えしなければなりません。 日本で最も使用されるのは仏教用語を使ったお悔やみの言葉です。しかし、もし相手の方 の信仰が神道(しんとう)の場合、お伝えした言葉がマナー違反になる場合があります。そこで当記事では、神道で使用すべき「お悔やみの言葉」を例文付きで詳しく解説します。
最終更新日2025/07/04
知人が亡くなった際は、お電話やメールなどさまざまな方法で連絡が来ます。その際には、まず「お悔やみの言葉」という形で弔意を示すことが重要です。ただし、そこで気をつけなければならないのは、故人様の信仰されている宗教に合わせて、適切に弔意を示すことが重要です。 この記事では、ご遺族がキリスト教を信仰されている場合にお伝えすべき言葉を解説していきます。
最終更新日2025/06/27