公開日2025/06/20|最終更新日2025/06/20
大切な方が亡くなった時「もっと話したいことが沢山あった」「伝えたいことがあった」などと、悲しみの中で思うこともあることでしょう。実は副葬品という形で、ご遺体と共にお手紙を入れることができます。そこで、思いの丈を手紙にして、故人様にお供えしても良いかもしれません。
今回は、故人様へ送る最後のメッセージの書き方について、例文と共に解説していきます。
結論からいえば、故人様へのお手紙を棺(ひつぎ)に入れても問題ありません。棺とは、故人様を葬るためこの世の最期に収められる箱、つまり棺桶(かんおけ)です。
なお、故人様と共に棺へ入れるお品は「副葬品(ふくそうひん)」と呼ばれています。副葬品は、故人様と共に土へ埋葬するためのお品を指すものであり、三途の川を渡るためのお金やあの世で暮らすための衣類など、死後の世界で役立てるという意味合いで納めるのが一般的でした。
現在では、ほとんどのご葬儀で火葬が行われているため、副葬品は燃やしても支障のない品物が望ましいとされています。故人様がお好きだったお花や小さめサイズのお菓子、折り鶴、生前気に入っていた服がとく納められ、お手紙も代表的な副葬品の一つです。
現代での副葬品は、あの世で役立てると言うよりも、故人様に対する想いやメッセージを届けることに重きが置かれる傾向があります。どちらの意味にしても、生きている方々が故人様を慮る気持ちに違いはありません。
手紙を棺に入れる場合は、事前にご遺族へお伺いを立てて、あらかじめ承諾を得ておくことが大切です。
ご葬儀前にご遺族へ挨拶に伺った際、まずは「故人様との関係性」を明確にお伝えします。「私は○○先生に大変お世話になった○○と申します。○○先生にお手紙を書いてきたのですが、入れさせて頂いても宜しいでしょうか?」と伺ってみると良いでしょう。
きっとご遺族はお喜びになるはずですし、故人様に対するなによりのご供養となるはずです。しかしながら、さまざまな事情で手紙を棺に入れることが叶わない時もあります。それでも真摯にお気持ちを伝えることで、お仏壇やお墓などに供えて頂けるかもしれません。
なお、故人様へ贈る封筒や便せんのデザインに「こうでなくてはならない」といった決まりはありません。故人様が喜びそうな色や柄が良いですが、あまりにギラギラと光るデザインやラメ入りのシールなど華美すぎるものは避けた方が無難でしょう。
なお、故人様がスムーズにお手紙を読めるよう、封はしない方が良いとされています。また、雨や防汚対策でビニール袋に入れたり、金属製のクリップで留めたりしていると、火葬の際に支障をきたす恐れがあります。お手紙を棺へ入れる際には、紙の封筒に便せんだけが入っている状態にしてから納めましょう。
基本的に、棺へ写真を入れることは問題ないとされています。
ただし、故人様の他に生きている方が写っている場合は注意が必要です。あくまで迷信ですが、生きている方の写真を棺に入れると、あの世へ引っ張られてしまうとの考えもあるため、縁起が良くないとされています。
そのため、旅行などで誰かが一緒に写っている写真を入れたい場合は、写っている方々全員に了解を得る必要があります。ただし、ご葬儀の場で「映っている写真を入れてもいいですか?」と聞かれると、なかなか断りづらいケースもありますので、最初から生きている方の写真は持参しない方が無難です。
もしお写真にご自身と故人様のお二人しか写っておらず「そのような迷信は信じない、自分と一緒に写っている写真で故人様を見送りたい」とお考えならば、写真を入れても何ら問題はありません。ただし、それでも「生きている方の写真は…」と、断られる事があります。その場合はご遺族の意思に従いましょう。またペットも大事なご家族であると考える方が増えておりますので、ペットの写真も棺に入れるのは避けた方が良いかもしれません。
なお、一緒に写っている人物がすでに亡くなっている写真ならば棺に入れても良いとされています。
棺に入れる手紙は、あくまで書き手と故人様両者だけのやりとりであり、弔電のようにご遺族の目に触れるものとは違います。そのため、かしこまった表現は必要なく、書き方は自由で構いません。
お手紙の内容は、思い浮かんだことを故人様へ話し掛けるような気持ちで、心を込めて書きます。一緒に行った旅行、楽しかった会話、心に残っている思い出、そして気恥ずかしくて直接言えなかった故人様への感謝や想いなどを書き綴りましょう。
お手紙の内容は自由で良いとされていますが、いざ紙とペンを目前にすると、何から書き始めて良いか戸惑う方もいるでしょう。そこでここからは、手紙の例文を載せていきます。構成や書き出しなど、故人様にお伝えしたいことをまとめるためのヒントとしてご活用頂ければ幸いです。
母さんへ
母さん、あまりに突然のことで僕の頭は真っ白です。
まさかこんなに早い別れが来るなんて思ってもみませんでした。
僕は母さんにとってあまり親孝行な子どもではなかったかもしれません。
思春期の頃は、酷い言葉で母さんを沢山傷つけてしまいました。
それなのにいつも笑顔でお弁当を作ってくれたり、受験勉強している時も、部屋にコーヒーやケーキをそっと持ってきてくれたりしたよね。それなのに、僕の態度はいつも素っ気なくて、そのことが心にずっと引っかかっていたのに、大人になった今でも謝れずにいたことを後悔しています。
大学に受かったときも、就職できたときも、僕より無邪気に喜んでくれた母さん。
失ってから、母さんの存在がどれほど心の支えになっていたか…いまさら知って愕然としています。
母さんがもうこの世にいないのが未だに信じられないよ。
さっき、母さんが大好物だった駅前の和菓子屋の豆大福をお供え用で買いに行きました。
そしたら無意識に泣いてたよ。お店のおばちゃんが驚いてた(笑)
大の大人なのに恥ずかしいね。
でも恥ずかしついでに言わせてもらうよ。
母さん、僕を産んでくれて有り難う。
沢山愛情を掛けて育ててくれて有り難う。
僕は母さんが大好きです。
数十年先になると思うけど、あっちに行ったら豆大福食べながら沢山話そうね。約束。
それまで、天から僕を見守っていて下さい。
大好きな母さんへ、〇〇より
おじいちゃんへ
私が生まれて一番喜んでくれたのはおじいちゃんだったと、何度も母から聞かされてきました。
おじいちゃんは、私が小さい頃から公園とか遊園地とか色々なところへ連れて行ってくれたね。
お散歩へ出かけるたび「ママにはナイショな!」て言いながら、いつも駄菓子を買ってもらえるのが楽しみだった。でも、近所の人に会う度「うちの孫は世界一可愛い!」て堂々と自慢されてちょっと恥ずかしかったのも覚えてる(笑)でも、嬉しかったよ。
最近は、あんなに元気なおじいちゃんが病気になったと聞いて、心が苦しかった。
会社帰りに病院へ寄っても、おじいちゃんは寝ていることが多くて、なかなかお話しできなかったね。
だけど、私の顔を見つけると目だけで精一杯笑ってくれてるのが分かったよ。
昨日、おじいちゃんの訃報を聞いて、茫然としました。
3年の闘病生活は、どんなに苦しかっただろうと思います。
だから、おじいちゃんはようやく、つらさや痛みから解放されたんだなって…
でも本当は、もっと生きててそばにいて欲しかった。
「病気治っちゃったよ!」って明るく笑いかけて欲しかった。
そんな事を考えてたら、色々な感情がぐちゃぐちゃになって涙が止まらなくなりました。
私のことを可愛がってくれたおじいちゃん。
死の間際まで私を気遣ってくれたおじいちゃんは私の誇りです。
おじいちゃん、私はもっと立派な大人になるよ。
おじいちゃんみたいに、色々な人から慕われる人になりたいです。
それまで、どうか見守っていて下さい。
愛をこめて、○○より
〇〇ちゃんへ
〇〇ちゃんと最初に出逢ったのは、同じ小学校に入学して席が前と後ろになった時だったね。
知ってる人が誰もいなくて心細かったけど、最初に〇〇ちゃんが話掛けてくれました。
こんな可愛い子が話してくれてる!て凄く嬉しくてドキドキしたのを覚えてる。
そんな〇〇ちゃんは、大人になってもずっと私の友達でいてくれましたね。
落ち込んでると飲みに連れて行ってくれて、慰めてくれた〇〇ちゃん。
就職が決まった時には、お祝いで一緒にディズニーにも行ったね。最高に楽しかった。
〇〇ちゃんはこれからもずっとずっと、おばあちゃんになるまでずっと一緒にいられると思っていました。
だけど、運命は本当に残酷です。
今はただ、心が空っぽになってしまって、どうしていいか分からないです。
道で〇〇ちゃんに似てる子を見つけるだけで涙が溢れます。
こんなの困るね。私がこんなんじゃ、〇〇ちゃんが安心して旅立てないよね。
〇〇ちゃんは私にとって一番の大親友。それは、これからもずっと変わらないよ。
立ち直るには時間が掛かるけど、あちらの世界からゆっくり見守っていて下さい。
〇〇ちゃん、今まで本当にありがとう。
きっと、またいつか逢おうね。
××より
大切な方との別れは、例えようもないほどに辛く悲しいものです。ただ泣いて手を合わせ祈る行為も立派なご供養となります。その上で、ご自身のお気持ちを込めて書き綴った手紙を作成し故人様の棺に添えることで、お気持ちに一区切りをつける助けとなるでしょう。
失った悲しみは決して癒えることはありませんが、天へ帰った故人様は、きっと笑顔になりお手紙をゆっくりご覧になっているはずです。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
お通夜での挨拶は、故人様の死に際して、参列者にこれまでのお礼を伝える大切な役割を担っています。一体何を話せば良いのか、参列者や僧侶に失礼のない言葉選びはできているかなど、悩む方も多いのではないでしょうか。そこで当記事では、長男が喪主を務める際に行う挨拶の構成や例文、注意点などをご紹介していきます。
最終更新日2025/07/11
大切な方の訃報を突然受けた場合、お返事として「お悔やみの言葉」を送るのが日本人の慣習です。しかしながら、お悔やみの言葉を伝える際は宗教によってマナーが異なるため、お返しは慎重にお伝えしなければなりません。 日本で最も使用されるのは仏教用語を使ったお悔やみの言葉です。しかし、もし相手の方 の信仰が神道(しんとう)の場合、お伝えした言葉がマナー違反になる場合があります。そこで当記事では、神道で使用すべき「お悔やみの言葉」を例文付きで詳しく解説します。
最終更新日2025/07/04
知人が亡くなった際は、お電話やメールなどさまざまな方法で連絡が来ます。その際には、まず「お悔やみの言葉」という形で弔意を示すことが重要です。ただし、そこで気をつけなければならないのは、故人様の信仰されている宗教に合わせて、適切に弔意を示すことが重要です。 この記事では、ご遺族がキリスト教を信仰されている場合にお伝えすべき言葉を解説していきます。
最終更新日2025/06/27