
公開日2025/07/18|最終更新日2025/07/18
近年では、お墓参りをする時間が無い、墓守の方自体が亡くなりお墓を引き継ぐ人がいないなど、さまざまな事情で放置され、荒れてしまった状態のお墓が増えてきています。そこで本記事では、誰も行かず放置されたお墓によって起こりうるトラブルやお墓の行く末、放置を防ぐ対策について解説していきましょう。
一時期の日本では、放置されるお墓が増え社会問題となっていました。なお、お墓が放置されるには個々でさまざまな事情があります。
・少子化により相続人がいなくなった
・家がお墓から遠く、お墓参りが困難となった
・経済的な余裕がなく、管理料の滞納が発生する
・高齢化によりお墓まで足を運ぶことが出来ない
・そもそもお墓がどこにあるか分からない、お墓の存在さえ知らされていなかった
なお、かつての日本には、放置されたお墓に関する罰則がありませんでした。そのため、誰もお手入れできない無縁墓は増えていく一方で、管理者には撤去の権限も無かったのです。
そこで、平成11年にお墓に関する法改正が施行されました。墓地の管理者は放置された墓を撤去する権限を与えられ、お墓の管理を放棄した所有者には、ケースによりけりですが罰則が課せられるようにも改定されたのです。
法改正の影響で、放置墓はかなり減少しました。しかしながら、放置されたお墓に関する認識はまだまだ浸透しないままのため、何の対策もされずに管理されないまま無縁墓となるお墓がまだまだ多いのも事実です。もしご親族関係で放置されたままのお墓がある場合は、トラブルを起こさないための対策が必要となるでしょう。
お墓をお手入れせず管理費も支払わず放置すれば、お墓は草なども生えて見た目にも良くない状況となります。それだけではなく、霊園側の判断により無縁墓とされ強制的に撤去される恐れがあります。強制撤去にはお金が掛かりますので、後に撤去費用の請求書が送られる可能性もあります。
ただし、何の前触れもなく、すぐに撤去へ踏み切られるわけではありません。お墓の撤去までの一般的なプロセスを紹介します。
霊園の管理者は墓地の使用者を確認し、手紙やハガキ、電話で管理料などの支払いを促す連絡を行います。支払い期限も伝えられることがほとんどなので、速やかに管理費を支払うことが必要です。
支払期限が過ぎても入金されない場合は、国が発行する機関紙の官報に、氏名や住所などの情報が掲載されます。さらに、管理費の未納、連絡の不通が続く場合、管理者の方へ「使用者確認の告知」が届きます。なおかつお墓には立て札での告示も行われます。
使用者確認の告知を無視し続ければ、お墓は無縁墓として認定されてしまいます。施設にもよりますが期間は大体1年間前後です。墓地の管理者は、市区町村長に無縁墳墓改葬許可申請を行います。申請が下りると、お墓は無縁仏と認定されますので、ご遺骨はお墓から取り出されます。
市町村の許可が下りると、墓石の撤去工事が決定します。なお、寺院や霊園によっては、墓石から魂抜きの儀式を行う所もあるようです。また、撤去工事はたいてい石材店が担います。また、取り出されたご遺骨は、多くの場合、他の無縁仏が埋葬されている「合祀墓」へ埋葬されることになります。
合祀墓に埋葬されたご遺骨は他人の方のご遺骨と混ざりますので、二度と取り出すことは出来ません。その時に後悔することのないよう、管理者からの通知はくれぐれも無視しないようにしましょう。また、更地になった区画は墓地の管理者に返還される形になるため、管理者は再び次の使用者を募ることができます。
公営墓地や民間墓地の場合は、撤去費用が公的資金でまかなわれるため、全てのご遺骨を撤去する費用が足りません。ゆえに、管理費の延滞が起こっても、墓地のスペースに余裕がある場合はすぐに強制撤去されることはほとんどないでしょう。
お墓は、祖先を祀るために必要な財産、つまり祭祀財産(さいしざいさん)に当たります。祭祀財産は、遺産相続とは違い、祭祀承継者が承継すると法で定められています。なお、内容は以下の通りです。
第八百九十七条(祭祀に関する権利の承継)
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
(引用:民法第八百九十七条 e-Gov法令検索)
後継者(つまり祭祀承継者)は、故人様の指定、あるいは慣習によって決まることとなっているのが基本です。ただ、万が一後継者が決定されない場合は、家庭裁判所に委ねられることとなります。
オススメ関連記事
どうすればいい、お墓の継承。継承者の選び方や手続きの流れをご紹介
お墓の名義人が亡くなった時に、そのお墓をどうするかということがしばしば問題としてあがります。日本では名義人の配偶者や...
お墓の名義人が亡くなった時に、そのお墓をどうす...
続きを読む
さまざまな事情があるにせよ、お墓の放置は宗教的な面、倫理的な面からもおすすめはできません。そこで、以下の方法を考慮されてみてはいかがでしょうか。ご自身が最適と思われるやり方を選択してみてください。
・お墓参り代行サービスの利用
忙しさや土地の関係で墓参りが滞る場合は、代行サービスに依頼してみましょう。供花や線香、参拝だけではなくお墓周りの掃除も引き受けてくれます。相場は1回に付き20,000~40,000 円程度です。見積もりは数か所から取り、お墓参りの内容も確認しましょう。
・永代供養墓の利用を考慮する
永代供養を寺院や霊園にお願いする方法があります。寺院や霊園が存続する限り、故人様のご遺骨の管理や供養を行ってくれます。
ただ、永代供養は永久ではありません。施設にも寄りますが、三十三回忌辺りの区切りまでの管理か、建物が運営している限り永続的に管理されるのかは伺っておいても良いでしょう。なお、管理期間に区切りがある場合は期間が過ぎるとご遺骨が取り出され、合祀されることになります。
・承継者の選択
お墓の承継者 は親から子どもへ引き継がれることが一般的です。ただ、実子の承継者 がいない場合は、親戚の方々や信頼のおける知り合いの方へご相談してみても良いでしょう。
お墓は大切なご先祖様が眠る神聖な場所ですが、諸々の事情で管理ができない事もあるかもしれません。しかし、日本人の矜持としてご先祖様の御霊はご供養することが大切です。できる限りお墓の放置は避け、さまざまな方法でお手続きを行っていくと良いでしょう。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
家族葬といえば、身内や親しい方がごくごく少数で行うご葬儀というイメージがあるでしょう。そこで「親しい人だけの集まりなら服装は自由でいい?」「身内だけでもご葬儀なのだから服はフォーマルにすべき?」などの疑問で当日のお召し物に迷う方も多いでしょう。 そこで今回は、家族葬での服装マナーや、男女別、子どもの服装でふさわしい装いをご紹介します。
最終更新日2025/12/05
献体(けんたい)とは、医学の発展に貢献するため、死後に自らの体を提供することです。自分の死後、火葬されるだけで終わるのではなく、最期まで社会に役立ちたいと考える方も少なくありません。しかし、献体は誰でもできるわけではなく、一定の条件や手続きが必要です。 そこで今回は、献体の意味や手続き方法、献体された方のご葬儀、献体のリスクなどについて解説します。
最終更新日2025/11/28
近年、ご葬儀の形式は多様化しており、従来の一般葬だけでなく、一日葬や直葬、家族葬など、小規模なスタイルを選ぶ方も増えてきました。家族葬はその中でも、ご家族や近しい親族を中心に見送る方法として広く知られるようになっています。 とはいえ、家族葬を選ぶにあたり、参列者をどこまで呼ぶべきか、親戚への連絡をどうするかなど、悩みや迷いが生じやすいのも事実です。 本記事では、家族葬を検討する際に知っておきたいポイントとして、家族葬が選ばれる背景や注意点、参列者の範囲を決める際の考え方などを、できるだけ分かりやすく解説します。
最終更新日2025/11/28