
公開日2025/10/17|最終更新日2025/10/17
近年、宗教にとらわれず、故人様のご遺骨を大地へと還す「自然葬」が増えています。自然葬とは、お墓にご遺骨を納めず、海や山に散骨して故人様をご供養する葬送方法です。そこで今回は、山への散骨に焦点を当て、法律に関する疑問や散骨方法、費用、トラブルを避けるコツを解説します。
結論からいうと、山への散骨(山林散骨)は法律違反になりません。山林散骨は、故人様のご遺骨を粉末状にし、森林や山に散布して自然に還す自然葬の一つです。
現代では「埋葬法」に基づき、故人様のご遺骨をお墓に納めてご供養するのが一般的です。しかし、お墓や宗教に縛られない、自然葬という形の散骨を選択するご家族も増えました。事情はさまざまで、山や自然が大好きだった故人様のご希望、墓守の後継者が見つからない、お墓の管理費などで子孫に負担をかけたくないなどの理由が挙げられます。
法律では、現時点で散骨を制限する内容は定められていないため、山への散骨は法律的に問題ないとされています。ただし、すべての場所に散骨できるわけではありません。
散骨すること自体は法的に問題ありませんが、地域によっては環境や景観への配慮を考え、散骨を制限する条例があります。よく調べずに、制限された場所での散骨が発覚した場合は、罰則が科せられることもあるのです。ご希望の場所が散骨を認めている地域かどうかは、事前に確認しておくことが大切です。
他人が所有する山や国有地での散骨は避けましょう。特に、はっきりと進入禁止の意思表示が認められる場所の場合、進入しただけでも軽犯罪法違反や、住居侵入罪に問われる可能性があります。
どうしてもその場所で散骨したい場合は、土地を所有する方の承諾を得なければなりません。これは、民法第206条、土地の所有権の規定で定められています。承諾が得られれば散骨できますが、拒まれてしまうケースがほとんどです。
所有する土地への散骨に対して抵抗をもつ方が多いため、後にトラブルへ発展する可能性もあります。他人が所有する山への散骨は避けるようにしましょう。
山に散骨する場合は、ご自身の所有する山に散骨する、あるいは専門業者に依頼するとスムーズです。散骨の手順は、以下のとおりです。
1.ご遺族やご親族からの理解を得る
2.散骨場所を定め、散骨可能か否かの確認承諾を得る
3.埋葬されているご遺骨は自治体から改葬の許可を取る
4.ご遺骨を取り出す
5.ご遺骨はパウダー状になるまで粉骨する
6.パウダー状のご遺骨を撒く
7.お線香を焚きお花や供物を置く
8.故人様のご冥福を静かに祈る
9.自然に還らないものや供物は持ち帰る
お墓に埋葬する前に散骨を行う場合、改葬の許可は不要で、基本的に埋葬許可証も必要ありません。ただし、個人ですべての手順を行うのには負担がかかるため、専門業者に依頼したほうが現実的でしょう。
業者にご依頼すれば、散骨に適した場所を知っているため、散骨場所を探す必要がなくなります。さらに、ご遺骨をパウダー状にするオプションを利用できることも多いです。また、近隣とトラブルにならないよう配慮してもらえるため、ご遺族の負担を減らすことが可能です。
なお、業者に粉骨や散骨を依頼する場合、埋葬許可証の提示を求められる場合もあります。埋葬許可証は重要な公的文書でもあるため、基本的には保管しておきましょう。
山への散骨にかかる費用相場は、依頼内容や業者のサービス内容、オプションの有無によって異なります。散骨専門の業者2~3ヶ所から見積もりを取り、価格や内容、相性などを加味して決めると良いでしょう。
なお、粉骨から散骨のすべてを依頼する場合、基本的な料金の相場は、100,000~300,000円程度です。粉骨でさらに別料金が課されることもあり、人手の粉骨か粉骨器で砕くか、粉骨の見学が可能かどうかによっても料金に差が出ます。
粉骨のみを依頼する場合、大人一人分で10,000~30,000円程度が相場です。手作業を依頼する、見学オプションを付けるなどの場合は、さらに費用が嵩みます。
また、ご遺族だけでご自身が所有する山に撒くのであれば、基本料金は0円です。そのほかでかかるのは、お花代と供物代、線香代、交通費程度でしょう。
ここからは、故人様のご遺骨を山に散骨する際の注意点を解説します。人間関係にヒビが入る、罪に問われる、散骨後に周辺住民とのトラブルが起きる可能性などもあるので、慎重に進めることが大切です。
ご遺骨は、散骨前に一粒で2mm以下のパウダー状に粉骨します。個人で粉骨することは可能ですが、大人一体分をカナヅチやすり鉢を用いて粉骨する場合、かなり時間がかかってしまうでしょう。また、大切な故人様のご遺骨を砕く行為は、思っていたよりも精神的に大きなダメージを受けます。
撒いてから人骨として発見された場合、死体損壊罪あるいは死体遺棄罪に問われるリスクもあるので、粉骨は業者に依頼すると良いでしょう。
ご自身の所有する山でも、水源地周辺での散骨はトラブルになるケースがあります。人々の生活水に混入される懸念、近隣の漁業エリアへの影響、観光地での風評被害に関わる可能性があるためです。
また、人骨に対する感情は人によってさまざまで、お住まいの近くで散骨されたことを知り、気分を害する方も少なくありません。散骨場所を個人で探す場合は、自治体が許可する区域の中から、水源地がなく、民家や人のいない場所を探す必要があります。
一方、散骨はあくまで粉状の骨を撒くだけの行為に当たるため、粉の上に土をかければ埋葬となってしまいます。許可されていない場所での埋葬は法律違反に当たるので、注意しましょう。また、山は天気が変わりやすくなる、足元が悪い、熊に遭遇しかねないなど危険な状況が予想されます。
災害に巻き込まれないためにも最大限の注意を払い、天候が悪い日や真冬の凍結時は避けるようにしましょう。
また、散骨場所に目印を残すことは禁じられています。同じ場所に来て拝みたい場合は、周囲の写真を撮ったり、デジタル上の地図で位置にチェックマークを残したりするなど、工夫をしてみると良いでしょう。
山の近くに以下の施設がある場合は、自治体の条例で散骨に対する制限がかかっている場合が多いです。
・キャンプ場などの水辺
・観光地(テーマパーク含む)
・海水浴場
・養殖場などの漁業区域
・生活基盤の水源地(湖、川、ダム)
・住宅地
・商業施設
・公共の場所、人の集まる公園
・海上交通路
人が多く集まる地域の場合、山が私有地でも散骨できないことがほとんどです。個人で散骨を決めると、大きなトラブルに発展する恐れがあるため、必ず自治体へ確認しましょう。
自然葬はご遺骨を手元に残せないため、抵抗をもつ方も少なくありません。誰にも相談せず個人で散骨を決めると、親戚中と大きなトラブルに発展することもあります。
法的にご親族からの了解を得る必要はありませんが、理解を得ることは重要です。トラブル回避のためにも、事前にご親族間でよく話し合い、結論を出すことをおすすめします。
すでにご遺骨がお墓に埋葬されている場合は、埋葬されている地区の役所から改葬許可を得る必要があります。手続きは市区町村によって異なるので、必要書類や手続きの予約が必要かを確認すると良いでしょう。
山への散骨を決めた場合、散骨できる場所や禁止されている場所、各自治体の条例、ご遺骨の撒き方など確認すべき点が多々あります。そのため、すべての工程を個人でこなすのは困難でしょう。ご親族との話し合いも含め、散骨を専門とするプロの業者に相談することをおすすめします。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
近年では、歳を重ねお墓参りが難しくなった方やお墓を管理する子孫がいないといったさまざまな理由で、お墓の永代供養を考える方が増えています。永代供養とは、霊園や寺院が長期にわたり、ご遺骨を管理し供養してくれる契約のことです。 今回は、永代供養とは具体的にどのようなものなのか、また永代供養のさまざまな形や参拝方法、マナーについてもご案内します。
最終更新日2025/11/21
昨今の日本では、さまざまな理由でお墓を持たない方が増えつつあります。お墓には故人様のご遺骨が埋葬され、ご遺族やご親族がご供養のため手を合わせに来る場所として浸透してきました。しかしながら、お墓を持たない事を選択したご遺族は、ご遺骨をどのように埋葬しご供養なさっているのでしょうか。 そこでこの記事では、お墓を持たない人のご遺骨の扱い方やご供養の方法について解説いたします。
最終更新日2025/07/18