
公開日2025/09/26|最終更新日2025/09/26
ご葬儀の会場に入ると、故人様が大切にされていた品や思い出の写真などが飾られたスペースを目にすることがあります。これは「メモリアルコーナー」と呼ばれ、参列者が故人様を偲ぶための場所として設けられています。
しかし、いざ喪主やご遺族の立場になり、そのコーナーを準備しようとすると、「どのようなものを飾ればよいのか」「避けた方がよいものはあるのか」と悩む方も少なくありません。本記事では、メモリアルコーナーの役割や飾る品物の例、注意点について分かりやすく解説いたします。
ご葬儀のメモリアルコーナーとは、故人様の思い出の品や写真、趣味の愛用品、制作された作品などを展示するために、葬儀場内に設けられるスペースのことです。斎場の入り口付近や受付周辺、参列者の動線上など、多くの方の目に触れやすい場所に配置されるのが一般的です。
このコーナーには、故人様の意外な一面や生前の功績、普段とは異なる魅力的な表情などをご紹介することで、参列者により温かく心に残るお別れの時間を過ごしていただきたいというご遺族の思いが込められています。
メモリアルコーナーは、参列者の皆様が故人様の人生や人柄に触れ、思い出を共有しながら偲ぶための場として、ご遺族のご意向で設けられる心のこもった空間なのです。
メモリアルコーナーは、必ず設けなければならないものではありません。故人様に関する品々を準備・展示するには、一定の時間や労力が必要となるため、ご遺族のご事情や心の余裕によっては、設けられない場合もあります。
とはいえ、近年では故人様をより深く偲ぶ場として、メモリアルコーナーを設けるご葬儀が増えてきている傾向にあります。
では、なぜ故人様の人生や思い出をメモリアルコーナーで紹介することに意義があるのでしょうか。
【メモリアルコーナーの意義】
・故人様との思い出を参列者と共有できる
・敬意や感謝の気持ちを形にできる
・故人様との思い出を鮮明にできる
・悲しみに向き合う心の整理の助けとなる
ご家族を見送るご葬儀は、ご遺族にとって非常につらく、心の余裕を持つことが難しい時間でもあります。そのような中で、メモリアルコーナーに何をどのように飾ればよいのか迷われる方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、実際に多くのご葬儀で飾られている例を挙げながら、故人様を偲ぶための参考になる情報をご紹介いたします。
メモリアルコーナーにおいて最も大切なのが、故人様のお写真です。遺影のように格式のある一枚だけでなく、日常の何気ない一瞬を切り取った写真もぜひ飾ってみてはいかがでしょうか。
・趣味に取り組んでいる写真
・旅行先での記念写真
・幼少期や若いころの写真
ゴルフやサーフィン、陶芸、盆栽など、趣味に打ち込む姿をはじめ、日常の自然な一コマを写した写真は、故人様の人柄を伝える上でおすすめです。
また、結婚式や七五三、お宮参りなど、人生の節目を記録した昔の写真も、故人様の歩まれた時間を偲ぶ上で大切な思い出となるでしょう。
故人様が動いている映像を流すことも、メモリアルコーナーの演出として効果的です。たとえば、近所を散歩している姿や、庭で草花の手入れをしている場面など、日常の何気ないひとときが、かえって故人様らしさを伝えてくれるものです。
もし映像をまとめるお時間がない場合でも、素材となる動画データを葬儀社に渡せば、雰囲気よく編集してくれるサービスを提供している場合もあります。対応の有無や、編集にかかる時間・費用については、事前に葬儀社へご確認ください。
故人様が生前に親しまれていた趣味や創作活動を感じられる品々は、メモリアルコーナーを温かく彩る大切な要素です。
たとえば、油絵や陶芸作品、小説、手芸品など、故人様の手による作品があれば、それを飾ることで空間に華やかさが加わり、個性や歩まれた人生がより一層伝わります。また、野球観戦が趣味だった方であれば、応援グッズやユニフォームを、着用している写真とともに展示するのも良いでしょう。
ただし、展示の可否は会場の状況によって異なるため、事前に葬儀社へ確認しておくことをおすすめします。
メモリアルコーナーには、故人様の好物だった食べ物や飲み物を添えるのも、心のこもった供養のひとつです。設置を希望される場合は、葬儀社の担当者に相談し、セッティングをお願いするとよいでしょう。
ただし、葬儀場によってはお供え物以外の飲食物の持ち込みが制限されている場合もありますので、事前の確認が必要です。
故人様が仕事で長年愛用されていた万年筆やネクタイピンなどは、その努力やこだわりを象徴する品として、メモリアルコーナーにふさわしい展示物となります。
職人として活躍されていた方であれば、使い込まれた道具や作業着、作業中の写真などを飾ることで、真摯に仕事に向き合ってこられた姿が伝わります。
また、会社などから表彰を受けた経験がある場合は、賞状やトロフィーを一緒に展示することで、故人様の功績をたたえることもできます。
受付で参列者の皆様に小さな紙をお渡しし、故人様への一言メッセージを記入していただく形にすると、それらを色紙にバランスよく貼り付けて、メモリアルコーナーに飾ることができます。
このように参列者が参加できる形にすることで、故人様をより身近に感じていただく温かな演出となるでしょう。
メモリアルコーナーに、故人様の好きだったお花を添えることで、空間がより華やかで温かい雰囲気になります。
ただし、祭壇と同様に、トゲのある花や香りが強すぎる花は避けた方がよいでしょう。
メモリアルコーナーに飾る品物について、基本的に「展示してはいけない」とされるものはありません。ただし、故人様の尊厳を損なわない内容に限ることが大切です。
壊れると再現が難しいものや、大型で設置が難しいものについては、実物の代わりに写真での展示に留めるのが望ましいでしょう。また、照明の熱で溶けやすい素材や型崩れが心配な品も、写真での紹介がおすすめです。
なお、メモリアルコーナーの設置は無料で対応してもらえる場合もありますが、葬儀社によってはオプション扱いとなり、別途料金がかかることもあります。事前の打ち合わせで、費用や持ち込み可能な品についてしっかり確認しておきましょう。
加えて、「現在生きている方が写った写真は縁起が悪い」「一緒にあの世へ連れて行かれる」と感じる方もいるため、故人様以外の人物が映っている写真や動画は、可能であれば避けるのが無難です。
ご葬儀には、ご遺族やご親族だけでなく、生前に故人様と親しくされていたご友人や知人など、多くの方が参列されることがあります。メモリアルコーナーは、そうした参列者の皆様に故人様のお元気だった頃を思い出していただき、共にその死を悼み、偲んでいただくための大切な場です。
メモリアルコーナー作成にあたっては、故人様への敬意はもちろんのこと、参列される方々への配慮も大切にしましょう。メモリアルコーナーは、誰もが故人様との良い思い出に静かに向き合い、心を込めてお見送りできるような空間として設けられることが望まれます。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。