
公開日2020/04/08|最終更新日2025/10/24
「忌中」という言葉をご存じでしょうか。あまり馴染みがないため「喪中」は知っていても「忌中」はよく分からないという方も少なくありません。忌中とはそもそも何を意味し、喪中とはどのように違うのか、期間はいつまで続くのかと疑問に思うでしょう。
今回は、忌中の期間や、その間に控えるべきことについて詳しくご紹介します。
忌中とは、故人様の命日から四十九日間を指します。日本では、忌中のご遺族は故人様の死を悼み、外出を控えて慎ましやかに過ごすべき期間とされてきました。
しかし現代では、そこまで厳しい制約は課されません。忌中であっても将来のために勉強したり、生活のために仕事をしたりする必要があるので、普段通り学校や仕事に行き、食生活も普段通り行うのが一般的です。ただし、忌中に控えるべき慣習がいくつか残っているため、注意が必要な場面もあります。
喪中とは、故人様の命日から一周忌法要を終えるまでの約1年間です。忌中と同様に、故人様を偲び、慎ましやかに過ごす期間とされています。ただし、忌中より長い期間を指し、忌中では控えるべきことでも、喪中なら許される場合があります。
では、喪中では許されても忌中では禁止とされる行動には、どのようなものがあるのでしょうか。以下の表をご覧ください。
【忌中と喪中の違い】
| 【行動】 | 【忌中】 | 【喪中】 |
|---|---|---|
| 外出、買い物 | ○ | ○ |
| 年賀状 | ✕ | ✕ |
| 正月飾り | ✕ | ✕ |
| 神社の参拝 | ✕ | ○ |
| 神棚の参拝 | ✕ | ○ |
| 寺院参拝 | ○ | ○ |
| 初詣 | ✕ | △ |
| 慶事(結婚式等の祝事) | ✕ | ✕ |
| レジャー(旅行など) | △ | ○ |
| 贈物(お中元、お歳暮、香典返し) | ✕ | ○ |
| 娯楽施設(遊園地、映画館) | ✕ | △ |
初詣については、忌中であれば寺院のみ参拝可能とされ、喪中であれば寺院は問題ありませんが、神社は賛否が分かれます。
旅行などのレジャーに関しては、忌中では故人様を偲ぶ目的であれば許されるとされつつも、賛否があります。喪中でも同様に、故人様を偲ぶ目的であれば認められることがありますが、娯楽施設の利用については賛否両論があるため、避けるのが無難です。
忌中は、大切な故人様を失ってから間もない時期です。故人様を偲びながらも、通常と同じ生活を心掛けるようにすることが大切です。しかし、大変な不幸があったばかりの時期なので、結婚式や七五三、引っ越し、旅行、派手な娯楽は避けて、基本は静かに過ごします。
ただし、四十九日法要や五十日祭の予約、本位牌の準備は進めておきましょう。
忌中の際は、控えなければいけないことがいくつかあります。以下に控えるべき事項をまとめましたので、ご参照ください。
忌中では、お祝い事(慶事)に参加しないのが一般的です。むしろ、大切な方が亡くなった直後は、そのような気力すら沸かない時期でしょう。代表的な祝い事は、以下のとおりです。
・正月の飾り付け、おせち料理
・結婚式(招待・出席は基本NG)
・子どものお祝い(出産祝、七五三、お宮参り)
・新築工事や新築祝い
・各種祝い事(開店祝、落成祝、就任祝)の招待、出席
なお、お子様の入学式や卒業式(入園式・卒園式)には、出席しても差し支えありません。故人様も、子どもの健やかな生活をお望みのはずです。
また結婚式については、ご自身のお気持ちが整理されているのであれば、ご友人からのお呼ばれに参列して問題ないと考える方が増えてきています。忌中でも出席して差し支えないか、一言ご相談すると良いでしょう。なお、出席の際は、周囲に気を遣わせるような行動や発言を控えてください。
ただし、ご自身が式を挙げる場合は、式場側に忌中明けの日程に変更できるかを確認し、出席者に事情を説明して日程を調整してもらう必要が出てきます。
昔から神道には「死は穢れである」という考え方が受け継がれています。忌中は穢れの時期とされ、神道では四十九日を過ぎた50日目までがその期間にあたります。この間は神社への参拝はもちろん、境内に立ち入ることも控えるようにしましょう。
また、忌中の間は「神棚封じ」をしなければなりません。神棚は、いわば家の中にある神社になります。神様に死の穢れを近づけないようにするために、神棚にお札や半紙を貼り、忌明けするまではお参りを避けましょう。
一方、寺院には死の穢れの概念がないので、忌中であっても初詣や参拝が許されます。
忌中では、華やかな場所を避けて静かに過ごすことが大前提なので、パーティーや宴会への参加は控えましょう。年末年始であれば、忘年会や新年会への参加もできるだけ控えます。お断りの方法としては、相談するようにお伝えすることで、角が立ちにくくなります。
「妻の父が亡くなり、現在忌中のため側についていようと思っているのですが、本日はこのまま上がらせていただいてもよろしいでしょうか。」
「母が亡くなってからまだ間もないので気持ちの整理がつかず、今回は参加できる心情ではないのですが、どうしたら良いでしょう。」
以上のように、幹事や上司に伝えれば、配慮してもらえるかもしれません。どうしても断れない場合は、節度を持って参加しましょう。
忌中や喪中期間のお正月は、新年の挨拶を控える必要があります。前もって年賀欠礼状(喪中ハガキ)を出して、年賀状を辞退する旨をお伝えしましょう。時期としては、年賀状が用意される前の11月下旬頃が最適です。
また、お正月にご近所の方と顔を合わせた際は、年始の挨拶を交わすことになるでしょう。相手の方が忌中と知らずに「あけましておめでとうございます」と声をかけてくる場合もあります。その際は「今年もどうぞよろしくお願いいたします」と返せば問題ありません。
忌中にお祝いの言葉は使えませんが、お正月にふさわしい言葉でお返しすれば、相手の方も納得するでしょう。
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忌中は「より身を慎んで過ごす期間」でしたが、四十九日法要などが過ぎた忌明け後には、どのようなことをすべきなのでしょうか。以下で忌明け後に行う事項をまとめましたので、ご参照ください。
忌明け後は、香典返しを行いましょう。お通夜式やご葬儀・告別式でいただいた香典の金額に対して、お返しの品物をお贈りします。また香典返しの際は、忌明け法要を無事に終えられた旨を記載した挨拶状を品物に添えて贈りましょう。
仏式では、故人様の死から四十九日法要を終えることで「忌明け」となります。ただし、ご自宅に神棚がある場合は、仏教を信仰していても、神棚に関する扱いは別と考えてください。
神式において、忌中は50日目までとされ、50日を過ぎてから封じていた神棚を解きます。やり方は、神棚封じのために貼ったお札や半紙をはがし、今まで通りお参りを再開させます。
忌中は、故人様がご遺族を悼む大切な時期です。現代は昔ほどの制約はないものの、特別な期間であることに変わりはないため、行動に迷う方も多いでしょう。そこでここからは、忌中に関するよくある質問について回答します。
忌中の旅行は、基本的に控えるのが望ましいとされています。これは多くの宗派で、四十九日までは故人様の霊が自宅にとどまっていると考えられているためです。
ただし、仕事の出張や、故人様との思い出の地を訪れて、心の整理をつけたいなどの事情がある場合は、周囲の理解を得たうえで出かければ問題ありません。
忌中に散髪をしても問題ありません。ただし、後に法要が控えていることを考慮し、派手な色に染めるのは控えましょう。
古来の日本において、忌中のご遺族はできる限り外出を控えるのが基本でした。しかし、現代では状況が異なり、買い物や外食をしても問題ありません。地域によっては、周囲への確認が必要な場合もありますが、おおむね構わないといった回答を得られるはずです。
ただし、大宴会や祝いの席など華やかな場は控えましょう。
基本的に祝い事の食事は避けるべきです。特におせち料理は、お祝いを意味する料理が多いため、忌中にはふさわしくありません。忌中のお正月には、年越し蕎麦や「ふせち料理」などがおすすめです。また、祝いの意味を持たないお料理なら、蒸しガニや鍋料理、しゃぶしゃぶなどでも問題ありません。
昔は、ご家族の死を知らせるために、忌中は玄関先に「忌中」の張り紙を掲げていました。これは、死の穢れを外に出さないという願いを込めたお札でもあったと考えられています。
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