
公開日2024/11/22|最終更新日2024/11/22
位牌は、故人様の魂を宿らせてご供養するために用いられる木札です。人が亡くなると、葬儀社や菩提寺の方で白木の仮位牌が用意され、四十九日法要までにご遺族が本位牌を用意するのが一般的な流れです。しかしながら、中には生前にご自身で位牌を作成したいと考える方もいらっしゃいます。
そこで当記事では、生前位牌とは何か、また生前位牌のメリットや注意点も解説いたします。
生前位牌は、生前のうちに、あらかじめ自分で作っておく位牌のことです。逆修牌(ぎゃくしゅはい/ぎゃくしゅうはい)とも呼ばれています。
位牌には、戒名が入れられます。戒名は亡くなった方に付けられるものという認識が一般的でしょう。しかしながら、仏式では生前に戒名をいただくのが本来の形です。なぜならば、戒名を授かることは仏門に入り、お釈迦様の弟子となった証になるからです。
つまり、生きているうちに戒名をいただき、生前位牌を作ることは、仏教徒として新たな人生が始まるといった意味にもなるため、縁起が良いと伝えられています。
生前に作成される位牌が逆修牌と呼ばれるのに対し、死後に作成される位牌は順修牌(じゅんしゅはい/じゅんしゅうはい)と呼ばれています。いずれも同じ位牌ではあるものの、作成する目的が異なります。
死後に作られる順修牌は、亡くなった方を供養するために作られる位牌です。位牌に刻まれる戒名は、4つの号(院殿号・院号、道号、戒名、位号)で構成されており、すべての文字が金色に塗られています。ただし、この構成はあくまで一般的なものであり、宗教によっては梵字が入ったり、必要ない号が抜かれたりする場合もあります。
一方、生前に作られる逆修牌は、戒名の二文字部分だけが朱色で染められているのです。朱色は仏教上で不老長寿を表す色とされ、健康なまま長生きできるようにといった願いが込められています。
ここからは、生前に位牌を作成するメリットをご紹介していきます。
死後に受ける戒名は、僧侶から授かった戒名をそのままいただきます。しかしながら、生前であれば僧侶と相談しつつ戒名を決められます。戒名の一文字には多くの場合生前の名前が入りますが、そこに好きな漢字を入れるなどといった変更を加えられるのです。
また、戒名にはランクがあります。男性ならば高い順で「院居士、院信士、居士、信士」、女性は「院大姉、院信女、大姉、信女」です。ランクにこだわりのある方は、あわせて相談してみるのも良いでしょう。
なお、戒名のランクが上がれば上がるほど、金額も上がります。以下は死後に戒名をいただいた場合の一般的な相場ですが、こちらも寺院や宗派によって異なります。
・院居士、院大姉…1,000,000円以上
・院信士、院信女…500,000~1,000,000円
・居士、大姉…500,000~800,000円
・信士、信女…100,000~500,000円
なお、生前戒名の場合は、上記の相場より金額を抑えられる場合が多いので、そこも利点といえるでしょう。しかしながら、お金を積めばランクの高い戒名が得られるわけではありません。高ランクの戒名を得るためには、世間への貢献度や寺院との関係性も大切な要素です。
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生前に戒名を授かれば、ご遺族の金銭的負担を軽減できるというメリットもあります。戒名は一番低いランクでも、決して安価なものではありません。よって、ご自身の死後にご遺族が高い金額を支払って授かるよりも、生前にご自身でお好きな戒名を授かり、納得のいく金額を支払っておく方が、より安心できるはずです。
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仏教では、生前に戒名を授かり、ご自身の死後に対する冥福を祈る行為を逆修(ぎゃくしゅ)といい、死後のご供養で受けるより7倍の高徳が得られるとされています。なお、生前位牌を作るだけでなく、ご自身のための墓石を先に建て、朱色で名前を刻むなどの葬儀供養も逆修にあたります。
生前位牌を作るにあたって、留意すべき点があることも視野に入れなければなりません。ここからは、詳しい注意点をご紹介いたします。
入る予定のお墓が菩提寺にある場合で戒名を授かりたい時は、菩提寺の僧侶に相談することが大前提です。ネットなどに申し込んで戒名をいただいてしまうと、菩提寺のお墓に入れてもらえなくなるなどのトラブルにつながりかねません。
お墓を新しく購入する分家の方々(長男ではない家系)は、寺院や霊園などお好きな場所にお墓を建てられるため、お墓を購入した寺院や霊園のルールに従って戒名を決めると良いでしょう。
生前位牌を作る場合は、必ずご家族に相談して決めるようにしましょう。生前位牌があることを誰も知らないまま亡くなってしまった場合、ご遺族となったご家族が、重複して位牌を作成してしまう可能性があります。ご希望の戒名で供養してほしい場合は、必ずご家族に伝えておくことが大切です。
生前位牌は、死後に作る場合と方法はあまり変わりません。ただし、生前位牌であるといった旨を付け加えておかなければ、戒名に朱色を塗ってもらえないなどのトラブルにつながりかねません。スムーズに生前位牌を授かるためにも、以下の手順をご参照いただければと思います。なお、地域や宗教により、多少の違いがあります。
①戒名を授かる
菩提寺にお墓がある場合は、必ず菩提寺の僧侶へご相談しましょう。菩提寺がない場合は、同宗派の お寺へ出向き、檀家になることで戒名を授かれます。ただし、お墓の購入や管理費、法要の依頼が必要となるため、費用の負担は大きくなります。
また、檀家にならず、戒名授与サービスだけを受けることも可能です。菩提寺はなく霊園にお墓がある場合は、霊園に相談すれば僧侶を紹介してもらえる場合があります。
②仏壇店などで位牌を発注する
位牌の形に決まりはないので、好きなデザインを選びましょう。その際は、必ず生前位牌である旨を伝え、戒名は朱色にします。そして、後に没年齢や没年月日を彫ってもらえるようレイアウトを考えます。
死後は、仏壇店で朱色部分を金色に塗り替えてもらい、没年齢や没年月日を彫ってもらうことになりますが、この作業はご家族にお願いしておきましょう。
生前位牌を作成することは、大きな高徳が期待できる逆修にあたります。ただし、戒名を決める場合は菩提寺に依頼するようにしましょう。また、生前位牌の存在をご家族にお伝えしておき、後々のトラブルにつながらないよう配慮することが大切です。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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