2021-04-08
「ご冥福をお祈りします」は、ご葬儀の場面で定番のお悔やみの言葉になります。しかし、実は宗教やご葬儀の場面においては「ご冥福をお祈りします」がふさわしくないこともあります。そのような場合、代わりにどのような言い回しや言葉を使えばいいのでしょうか。
そこで今回は、「ご冥福をお祈りします」に関するマナーについてご紹介します。
「ご冥福をお祈りします」はご葬儀の場でよく使用されるため、実際に口にされたことがある方も多いと思いますが、その反面、その意味について理解されている方は少ないのではないでしょうか。
冥福は「めいふく」と読み、冥は「冥土(死後の世界)」を、福は「幸せ」や「福を招く」という意味を表しています。そこから、「ご冥福をお祈りします」は「死後の世界での幸せを祈っています」という気持ちを表す言葉となっています。
なお、「ご冥福をお祈りします」というお悔やみの言葉は、故人様に対して使用する言葉になります。ご葬儀のなどの際に実際に使用する場合は、最初に「故人様の」や「○○様の」と付け加えるようにしましょう。
「ご冥福をお祈りします」という言葉を使用する際に気を付けたいのは、宗派によっては不適切な場合があるということです。厳密に言うと使用してはいけないわけではありませんが、気にされる方もいらっしゃると思います。
以下では、どうして「ご冥福をお祈りします」という言葉が駄目なのかをまとめておりますので、ご参照ください。
浄土真宗のご葬儀では、「ご冥福をお祈りします」の使用は控えるようにしましょう。浄土真宗では、亡くなられた方は仏様になる「臨終即往生(りんじゅうそくおうじょう)」という教えであり、「ご冥福をお祈りします」は「死後の世界である冥界に迷い込む」という意味に捉えられてしまいます。
そのため、浄土真宗のご葬儀などの際にかける言葉としては、「お悔やみ申し上げます」がよいでしょう。なお、「心より」を頭に付けると深い悲しみを、「謹んで」を頭に付けると敬意を表すことができ、目上の方にも失礼になりません。
神道のご葬儀に参列する際なども他の言い回しを使用することをおすすめします。神道では故人様はご先祖様と共に家の守り神となると考えられているため、死後の世界である冥土という考え方はふさわしくないとされます。
そのため、神道のご葬儀などの際にかける言葉としては、「御霊(みたま)のご平安をお祈りします」であったり、「御安霊(ごあんれい)の安らかならんことをお祈りします」などがよいでしょう。
キリスト教の場合そもそもお悔やみの言葉を使用しません。これはキリスト教における死に対する考え方が他の宗教と違うことが挙げられます。
キリスト教における死は、「地上での罪を許されて天に召される」ことを言います。つまり、天から祝福されるべきものであるという考えから、キリスト教では故人様の死を悲しむお悔やみの言葉を使用しないとされています。
そのため、キリスト教のご葬儀などの際にかける言葉としては、「安らかな眠りにつかれますよう、お祈り致します」がよいでしょう。
突然の訃報を電話やメールで知ることもあると思います。その場合にはご葬儀への参列の可否を返信しなければいけませんが、その前にお悔やみの言葉を伝えるようにしましょう。以下では相手や場面、連絡方法ごとの「ご冥福をお祈りします」を用いた文例をまとめましたので、ぜひご参照ください。
電話で訃報の連絡を受けた場合、まずは連絡をいただいたことへのお礼を述べるようにしましょう。
・ご親族
お辛い中、お知らせいただきありがとうございます。故人のご冥福をお祈りします。すぐに準備して伺います。
・ご友人や知人
お辛い中、お電話いただきありがとうございます。○○君(さん)のご冥福をこころよりお祈りし致します。ご迷惑でなければ、これからご自宅に伺いたいのですが、伺ってもよろしいでしょうか。
・ビジネスシーン
ご連絡いただきありがとうございます。突然のことで言葉も見つかりません。○○様のご冥福を心よりお祈り申し上げます。よろしければ生前お世話になっていた故人にお礼を述べたいのですが、今後の日程はお決まりでしょうか。
お悔やみのメールをお送りすることはあまりないため、いざメールをお送りすることになった場合、戸惑われると思います。メールの場合、件名と内容のどちらもシンプルで読みやすくするのが重要です。
・ご親族
件名:(ご自分のフルネーム)よりお悔やみ申し上げます
本文:
突然の訃報に驚いています。
○○様の冥福をお祈りしています。
本来であれば直接お伺うべきところではございますが、メールでのお悔やみとなり申し訳ありません。
心身ともに大変な時だと思いますが、体調を崩されないようご自愛ください。
後日、改めてお伺いいたします。
・ご友人や知人
件名:お悔やみ申し上げます(“自分のフルネーム“より)
本文:
○○君(さん)のご逝去を知り大変驚いています。
○○君(さん)のご冥福を心よりお祈りしております。
本来であれば直接お伺いし、お悔やみをお伝えしたいところですが、このような形になり申し訳ありません。
お母様がご無理をされていないかが心配です。
私にできることがあればいつでもご連絡ください。
・ビジネスシーン
件名:(ご自分のフルネームもしくは“部署名”一同)よりお悔やみ申し上げます
文面:
○○様の突然の訃報に驚いています。
都合によりご葬儀に伺うことができず、申し訳ございません。
略儀ながらメールにてお悔やみ申し上げます。
心より○○様のご冥福をお祈り申し上げます。
「ご冥福をお祈りします」はご葬儀の場ではよく使用されるフレーズではありますが、今回ご紹介したように、故人様の宗教・宗派によってはふさわしくないこともあります。しかし、お悔やみを伝える際に大切なのは、相手に寄り添った言動をすることです。言葉が出てこない時などは相手を思いやる気持ちを素直に伝えてみてもよいでしょう。
60年の歴史と実績のあるセレモニーのご葬儀専門ディレクターが監修。喪主様、ご葬家様目線、ご会葬者様目線から分かりやすくのご葬儀のマナー知識をお伝えします。
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